[P82-1] 腋窩切開法による心房中隔欠損孔閉鎖術の早期手術成績
キーワード:小切開, 心房中隔欠損症, 術後鎮痛
【背景】当施設ではASD閉鎖術に対するアプローチ法として胸骨正中切開および右後側方開胸に加え、2018年より腋窩切開法を導入した。また腋窩切開症例では全例ポプスカインによる肋間神経ブロックを施行しており、術後早期の鎮静管理への好効果が期待される。【対象と方法】2018年から現在までの期間に心房中隔欠損孔閉鎖術を施行した24例を対象とした。アプローチ法の内訳は胸骨正中切開10例、腋窩切開12例、右後側方開胸2例であり、胸骨正中切開症例と腋窩切開症例の早期手術成績を比較検討した。手術時年齢および体重の平均値は8.2 vs 4.3歳、26.8 vs 14.6kgで有意差を認めなかった。平均観察期間は30.5ヶ月であった。また、肋間神経ブロックの効果判定のため、併用した鎮静剤投与量の面から検討を加えた。【結果】死亡症例および再介入例は無し。手術時間、体外循環時間、心停止時間はそれぞれ平均207 vs 173分、65.3 vs 51.6分(p=0.02)、28.8 vs 23.5分で体外循環時間のみ腋下切開が有意に短かった。術後挿管時間、drain留置期間、ICU滞在期間、術後入院日数はそれぞれ平均6.5 vs 3.9時間、1.9 vs 1.3日(p=0.01)、1.5 vs 1.75日、13.3 vs 15.7日でdrain留置期間のみ有意差を認めた。術後併発症として正中切開群では気胸を1例認めた。腋下切開群では心房粗動1例と心房外の小血腫形成(いずれも心膜切開部下端付近)を2例に認めた。術後24時間までの平均心拍数は両群間で有意差はなく同程度の鎮静レベルが得られていると判断した。プレセデックスおよびミダゾラムの投与量は両群間で有意差を認めず、肋間神経ブロック併用の効果は鎮静剤投与量の面からは明らかではなかった。【結語】当院で施行した腋窩切開法による心房中隔欠損孔閉鎖術の早期手術成績は満足できるものであった。肋間神経ブロックによる鎮痛効果については術後の鎮痛/鎮静管理に好影響を与える可能性があると考えるが更なる仔細な検討が必要である。