[P82-2] Hypo LVを持つ成人ASD患者に対する外科的介入について
Keywords:心房中隔欠損症, hypo LV, 閉鎖術
【目的】成人期ASDに対する閉鎖術において、術前に非常に小さな左室を持つ症例における閉鎖術施行後の変化を検討した。【方法】当院において2017年1月から2019年12月までの間に外科的にASD閉鎖術を施行した症例のうち、特に小さなLV(LV mass index(g/m2)<70)を持ち、術後に心不全の発症が懸念された6例を抽出し後方視的に検討した。【結果】患者背景は、年齢(歳)は46.3±25.2、Qp/Qsは2.6±0.6。症状はNYHA2が3例、NYHA1が3例、Afは2例で合併していた。経胸壁心エコー(TTE)における術前のLV mass index(g/m2)は48.4±10.7、LVEF(%, Teicholz)は67.6±4.4、中隔におけるE/e´は6.70±0.78、全例が二次孔欠損であった。合併手術を要した症例は2例で、共に三尖弁形成術+左心耳切除であった。アプローチは、正中切開 3例、MICS 3例であった。人工心肺時間(分)は111.3±43.3、大動脈遮断時間(分)は51.7±18.2であった。術後TTEにて、E/e´ 8.4±1.5(p<0.05)の上昇を認めた。LV body mass index(g/m2) 59.9±12.9 (p<0.05)は増加を認め、LVEF(%, Teicholz) 66.6±4.1の低下は認めなかった。ICU滞在日数、術後入院日数はそれぞれ1日及び10.5日であり、術後に合併症は認めなかった。退院時の症状はNYHA2が1例、NYHA1が5例であった。【結論】術前の左室が小さくても周術期に大きな問題は生じなかった。術後にE/e´の上昇を認める事から、ASD閉鎖に伴う左室への流入血流量の増加に対する心筋の相対的な拡張能低下が予想されるが、同時にLV massの増加とEFの維持により、全体の駆出量は維持されているものと考えられた。今後はより長期的な左室の変化を観察していきたい。