The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)84(P84)
外科治療6

指定討論者:松久 弘典(兵庫県立こども病院 心臓血管外科)

[P84-5] Hybrid術後のNorwood手術において、動脈管組織を利用して大動脈再建を行った左心低形成症候群の一例

渕上 裕司, 永瀬 晴啓, 細田 隆介, 保土田 健太郎, 枡岡 歩, 鈴木 孝明 (埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓外科)

Keywords:左心低形成症候群, Hybrid procedure, Norwood手術

【緒言】左心低形成症候群(HLHS)に対して当院ではHybrid procedureを行っている。動脈管ステント留置によって、大動脈弓再建などの外科的介入が後々困難になる場合がある。特に動脈管組織は脆弱であり大動脈弓再建時はステントと一緒に切除してしまうことが多い。今回ステント挿入後に残存した動脈管組織の一部をNorwood手術における大動脈弓再建に利用することのできた症例を経験したので報告する。【症例】出生後、心雑音・チアノーゼにて当院へ搬送されHLHSと診断された男児。日齢6で待機的BASを施行、翌日にHybrid procedureを行った。術後、難治性乳び胸水発症し、長期入院管理が必要となった。当初はNorwood・Glenn手術を行う予定であったが、月齢10のカテーテル検査でPH認めたため、月齢11でNorwood・RV-PA conduitの方針となった。手術は人工心肺・超低体温・選択的脳灌流で行った。左右肺動脈の絞扼を解除。ステントが留置された動脈管を主肺動脈側で切断し、動脈管の頭側を切り進めると動脈管組織を再建に利用できると判断。動脈管内膜から留置されたステントを除去。大動脈弓から上行大動脈まで切開した後に、残存した動脈管組織をパッチとして利用して新大動脈弓を再建。その後、心房間交通の拡大、RV-PA conduitを置いた。人工心肺離脱困難でECMO導入し手術終了した。術後4日目にECMO離脱、術後17日目に抜管。術後造影CT検査では大動脈弓再建部に明らかな狭窄見られず、現在Glenn手術待機中である。【考察】通常、動脈管組織は脆く大動脈弓再建には不向きである。今回、術中にステントに裏打ちされた丈夫な動脈管組織が見られ、再建に使用できると判断した。術後CT検査でも血管内の狭窄・動脈管吻合部の異常所見などは見られなかった。小児における大動脈弓再建において自己組織の温存・再利用は重要であり、本症例のようにHybrid術後の動脈管組織が大動脈弓再建に利用できる可能性があると考えられる。