The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)85(P85)
外科治療7

指定討論者:落合 由恵(九州病院 心臓血管外科)

[P85-3] TGA/VSD/PSに対するaortic translocation (Ross-switch-Konno)術後にautograft吻合部の左室仮性瘤を形成し,修復を要した一例

小坂井 基史1, 櫻井 一1, 野中 利通1, 櫻井 寛久1, 村上 優1, 鎌田 真弓1, 大橋 直樹2, 西川 浩2, 吉田 修一朗2, 吉井 公浩2, 佐藤 純2 (1.中京病院,中京こどもハートセンター,心臓血管外科, 2.中京病院,中京こどもハートセンター,小児循環器科)

Keywords:左室仮性瘤, TGA/VSD/LVOTS, aortic translocation

【背景】左室仮性瘤の報告は心筋梗塞後や僧帽弁/大動脈弁置換術後の成人症例がほとんどであり,小児の報告は稀である.【経過】症例は7歳男児.TGA/VSD/PSに対して,2歳時に大動脈基部を右室流出路からen blocに摘出し,autograftとして左室流出路に移植する aortic translocation (Ross-switch-Konno)を施行した.右室流出路再建には ePTFE valved conduitを使用した.術後4ヶ月のカテーテル検査で,左室流出路後壁に10 mm大の仮性瘤が判明した.心エコーでは拡大傾向は見られず,また欠損孔も小さかったので,外来での経過観察を継続した.6歳時のカテーテル検査でPSの進行と左室仮性瘤の拡大を認め,再手術の方針とした.術前の造影CTの計測では,瘤径は24 x 16 mmであった.7歳で右室流出路導管再置換術+左室仮性瘤修復術を行った.右室流出路導管中枢側を切開,さらにVSDパッチを切開して左室流出路を観察した.後壁の,autograftの吻合部と思われる位置に仮性瘤に繋がる小さな欠損孔を認めた.欠損孔の辺縁は脆弱で,1針直接縫合したのち,周囲の比較的丈夫な組織に運針して 0.4 mm ePTFE patchを縫着して補強した.術後経過は良好で,半年のフォローでは再発を認めていない.【結論】外傷性を除く小児の左室仮性瘤は,文献的にはRoss/Ross-Konno手術後の合併症として散見される.要因としては,(1)大動脈弁-僧帽弁間線維組織の脆弱性,(2)pulmonary autograft中枢側に付着する右室心筋の脆弱性,が指摘されている.本術式の場合,Ross手術におけるpulmonary autograftと同様に,摘出する大動脈基部には右室心筋が付着するため,本症例における左室仮性瘤の成因として上記の(1)(2)は両方とも当てはまることになる.本術式を含めたTGA/VSD/LVOTSの手術(Nikaidoh, Half-turned truncal switchなど)では,autograft中枢側の吻合に注意を要するとともに,術後も仮性瘤合併に留意すべきである.