[P86-3] 新生児動脈管開存の外科的結紮術の適応と予後
Keywords:動脈管開存, 外科手術, 声帯麻痺
【背景】新生児, 特に早期産児の症候性動脈管開存(PDA)は薬剤不応性あるいは全身状態により2019年以前は外科的結紮術が選択されていたが, その適応と予後は明らかになっていない.【目的・方法】診療録を元に後方視的に在胎週数, 手術時日齢, 手術時体重, 併存症, 先行COX阻害剤使用, 手術適応, 合併症について検討した.【対象】当院の過去9年間で生後1ヶ月未満にPDA 結紮術(クリッピングを含む)を施行された77例.【結果】在胎週数は22週0日-41週1日(中央値:26週6日), 手術時日齢は日齢1-49(平均:16.5±9.4), 手術時体重は340-3,404 (mean:1,211±758)gであった. 併存症は循環器疾患では心房中隔欠損が9例と最も多く, その他心室中隔欠損, 胎児水腫, 三心房心, 双胎間輸血症候群, 先天性僧帽弁逆流を認めた. その他Down症候群が7例あった. 先行COX阻害剤使用は, 無し=15, インドメタシン(IND)1クール=15, 2クール=24, 3クール=14, 4クール=3, イブプロフェン(IBN)のみ=3, IBN・IND併用=3例であった. IND1クールの平均体重1304g, 2クール1005g, 3クール894g, 4クール 726gと体重が小さいほどINDの使用回数が多かった. 薬剤投与のない15例のうち13例は他の循環器疾患や染色体異常・多発奇形を合併していた. 手術適応は薬剤不応=44, 出血=12(脳, 肺, 腸管), 腸管穿孔・腹部膨満=8, 腎障害=14, 正期産かつ症候化=11, その他=1例であった. 合併症に関しては左声帯麻痺=12, 肝皮膜損傷=1, 創部感染=1例であり, 術後早期死亡例は2例あったが術後合併症に起因するものではなかった. 左声帯麻痺は手術時体重500-1000gで20.6%, 1000-1500gで33.3%, 1500g以上で10%の割合で認めた.【考察】症候性PDAによる全身状態の悪化だけでなく, COX阻害剤の副作用, 左声帯麻痺の合併症率が低くないなどの点から外科治療の介入時期や適応の判断は難しい.今後カテーテル治療の導入により再検討の余地がある.