[P86-5] 先天性大動脈二尖弁による重度大動脈弁閉鎖不全症に対するLeaflet Extension Techniqueの検討
キーワード:大動脈弁形成, 先天性大動脈二尖弁, 大動脈弁閉鎖不全症
【背景】先天性二尖弁による大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対する外科的治療として様々な弁形成術が報告されているが、未だ確固たる方法は確立されておらず弁形成の工夫が希求されている。当院にて1枚の自己心膜片の中央に弁口を作製する独自のLeaflet Extension Techniqueで大動脈二尖弁の重度ARに外科的介入を行った2症例の手術成績と問題点を後方視的に検討した。【方法】特徴1:弁形成に用いる自己心膜は0.615% Glutaraldehydeで5分処理、特徴2:1枚の自己心膜中央に新しい弁口となるSlitを作製、特徴3:切れ込みの入った左右を2枚の弁尖に見立て自己弁尖と縫着し良好な弁尖接合を維持、特徴4:自己心膜両端を交連部に吊上げ両交連の連続性維持と強度を確保【症例1】生下時からの大動脈二尖弁 (右冠尖・無冠尖癒合)によるARの経時的進行のため5歳時(体重16.4kg)に上記大動脈弁形成術を行った。術前大動脈弁輪径15.7mm (116% of Normal)、左室拡張末期容積143% of Normal。術後4年現在AR認めずもmean PG 35mmHg程度の経時的な大動脈弁狭窄の進行があり経過観察中。【症例2】2歳時に両方向性グレン手術を行った三尖弁閉鎖症(Ib) の患児。生下時からの大動脈二尖弁 (右冠尖・無冠尖癒合)によるARの経時的進行のため7歳時(体重11.6kg)のフォンタン手術の際に上記大動脈弁形成術を併施した。術前大動脈弁輪径15.0mm (120% of Normal)、左室拡張末期容積127% of Normal。術後7カ月現在AR認めずもmean PG 30mmHg程度の大動脈弁狭窄を認め経過観察中。【考察】弁口面積の若干の犠牲の代替にAR完全消失を目的とした当院独自の大動脈弁形成法はRoss・Konno法の適用しにくい乳幼児期の狭小大動脈弁輪症例においては、早期再手術回避の一助になり得る可能性が示唆された。一方で圧較差残存を含め遠隔期の大動脈弁・左室機能等を更に今後検証し、患児の成長に寄り添えるより良い弁形成法の確立に繋げていきたい。