第56回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

外科治療

デジタルオーラル(II)88(P88)
外科治療10

指定討論者:帆足 孝也(国立循環器病センター)

[P88-3] 二心室治療を目指した経過中、左上大静脈の経路変更を要した両側上大静脈を有する2症例

杉本 愛, 白石 修一, 高橋 昌, 土田 正則 (新潟大学大学院 医歯学総合研究科 呼吸循環外科学分野)

キーワード:左上大静脈遺残, 両側上大静脈, 心外ルート

【背景】両側SVCを有する症例では, 稀にLSVCが冠静脈洞から右房/右側心房へ接続せず, その走行が二心室修復の妨げとなることがある.
【症例1】1Y4M, BW 7.5kg. 診断: Left isomerism, intermediate AVSD, bilateral SVC (LSVC to left side atrium), vPS. II° AVBに対して生後4M, PMI後. 生後9M, 心カテ施行し, Qp/Qs=3.2, LVEDV 110% of N, RVEDV 151% of N. 待機的に心内修復術の方針. 両側SVCを有し, 太さに左右差なくbridging veinなし. RSVCは右側心房, LSVCは左側心房天井に灌流, IVCは心房中央やや右寄りに灌流. LSVCの心房内reroutingは困難と判断し, 心外ルートで再建の方針.
手術: 予め左右SVCを長く剥離しLSVCを心房接続部で離断. 心停止後, RSVC, IVCが右側心房に灌流するよう心膜パッチで心房内reroutingを施行. 大動脈遮断解除後, LSVCをaAo前面を通しRSVCに端側吻合した.
術後1年目のエコーで左右SVCや吻合部に狭窄を認めず.
【症例2】1Y4M, BW 10kg. 診断: DORV, PS, PLSVC, Cortriatriatum, hypoplastic LV. 出生時MV径: 5.3 mm (50% of N). 生後1M, 右B-T shunt +左PA形成施行. CPVCはRAの頭側に位置. LSVCはLAの背側からRAの天井に灌流し, これがLA内でCPVCからMVへの通路を外側から圧排, 肺静脈狭窄様の血行動態を呈した. LVEDVは時間経過で59% of N(生後6M)から95% of N(1Y)へと拡大. LSVCが僧帽弁流入を阻害する形態のため, 二心室治療を念頭に, palliative RVOTRおよびLSVC経路変更の方針とした.
手術: 予め左右SVCを長く剥離し LSVCをRA合流部で離断. 心停止後, LA内隔壁を切除しCortriatriatum repairおよびpalliative RVOTRを施行. 大動脈遮断解除後, LSVCをaAo前面を通してRSVCに接続した.
術後9M経過後, 左右SVCや吻合部に狭窄を認めず, 二心室修復待機中.
【結論】両側SVCを有し, LSVCの走行が二心室修復術の妨げとなった2例に対し, LSVCを心外ルートで再建し良好な経過を得た.