The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

体外循環・心筋保護

デジタルオーラル(II)89(P89)
体外循環・心筋保護

指定討論者:小泉 淳一(岩手医科大学 心臓血管外科)

[P89-1] 小児劇症型心筋炎に対する補助人工心臓の治療成績

渡邊 卓次1, 上野 高義1, 金谷 知潤1, 奥田 直樹1, 荒木 幹太1, 富永 佑児1, 石井 良2, 石田 秀和2, 成田 淳2, 澤 芳樹1 (1.大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科, 2.大阪大学大学院医学系研究科小児科)

Keywords:Fulminat myocarditis, VAD, ECMO

【背景】劇症型心筋炎は急速に心原性ショックへと進展した場合ECMOやVADといった補助循環治療が必要となる。小児VAD認定施設ならびに小児心移植施設である当院には、peripheral ECMOでは循環補助が不十分である劇症型心筋炎が搬送されることが多い。そこで今回、当院におけるVAD治療を要した急性期劇症型心筋炎の成績を報告する。
【患者】対象は2013年から2019年までに当院でVAD治療を要した劇症型心筋炎9例。年齢 2-16 (中央値10)歳、BSA0.59-1.51 (中央値0.83)m2であった。
【結果】初期治療として内科的治療を先行した症例は1例、peripheral ECMOを導入した症例は6例、central ECMOを導入した症例は2例であったが、当院搬送後全例でtemporally VAD (LVAD 2例, BiVAD 7例)へconversionした。そのうちVAD治療から離脱が可能であったのは3 例であった。植込み型VADへ移行した症例は3例で、そのうち2例は心移植に到達した。治療中に死亡した症例は4例であり、脳血管障害が4例で、そのうち3例は低酸素脳症であった。また、peripheral ECMOにより下肢虚血を来した症例が2例あり、いずれも一時的透析治療を要する急性腎不全を合併した。VAD離脱症例における装着期間は7, 10, 22日で、前者2例はECMO装着からCK値が正常化するまでに7, 8日と早期であった。後者1例は低酸素脳症のためにVAD装着下での移植待機は困難であったため、VAD off testを行い辛うじて離脱できた。
【まとめ】VAD治療を要した小児劇症型心筋炎症例は、特に頭蓋内合併症が多く良好な成績が得られなかったが、CKの早期正常化が得られるような症例ではVAD離脱が可能であった。小児劇症型心筋炎においては、救命だけでなく、脳障害をはじめとする後遺症を残さない治療を目指して、VAD治療が可能な専門施設への可及的早期の搬送が重要であると考えられた。