The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

デジタルオーラル多領域専門職部門(I)02(TRO02)

指定討論者:辻尾 有利子(京都府立医科大学附属病院)

[TRO02-1] Fontan術後の難治性腹水に対する腹腔ドレーン留置による臨床的・社会的効果の検討

森貞 敦子1, 安保 小百合1, 佐藤 一寿2, 脇 研自2 (1.倉敷中央病院 看護部, 2.倉敷中央病院 小児科)

Keywords:Failed Fontan, 難治性腹水, 在宅療養

【背景・目的】Fontan術後遠隔期の合併症である腹水貯留は、対症療法として腹水除去を行うが、奏功する治療がなく対応に苦慮する。今回、大量腹水により頻回の入退院を繰り返すFontan術後患者に腹腔ドレーンを留置し、在宅での腹水排液を可能にした。その臨床的、社会的有用性について検討を行ったので報告する。
【対象】A氏 中学生女児 既往歴:無脾症候群、右室型単心室、肺動脈狭窄、総肺静脈還流異常にて3歳時にExtracardiac TCPCを施行。術後高度徐脈でペースメーカー植え込み術実施、静脈-静脈シャントによる低酸素血症、鋳型気管支炎、低蛋白血症を併発している。約2年前より腹水貯留がみられ、約1週間ごとに入院し、腹腔穿刺による排液を行っていた。
倫理的配慮:患者の匿名性の保持を行い、学会発表について患者と保護者の了承を得た。
【結果】経時的に入院時の腹部膨満と1回排液量が増加し、苦痛の訴えが増え、1年後には排液希望の入院が週2回以上になった。Fontan循環の破綻を改善させる手段がなく、今後状態の増悪から頻回・長期入院の可能性があることを家族に説明した。家族は患児らしい生活をさせてあげたい希望があり、少しでも自宅で過ごせるために在宅で腹水排液をできる方法を検討した。
ご家族の同意を得て、8FrトロッカーアスピレーションキットRを留置型腹腔ドレーンとして下腹部に挿入し、自宅排液ができるよう物品調整や手技の検討、母への指導を行った。同時に、在宅支援のため訪問診療と訪問看護を調整・導入した。ドレーン挿入後は定期的に自宅で排液を行い、入院回数は月3~4回と腹水増加前から増えることはなかった。
【考察】Failed Fontan患者の問題は多岐にわたり、有効な治療も少なく個別に対応する必要がある。医学的管理とQOLとのバランスが重要であり、本患者は腹水の増悪で頻回、長期の入院を余儀なくされていた可能性が高く、ドレーン留置の意義は大きいと考える。