[TRP1-4] 先天性心疾患の子どもの終末期における親の意思決定を支える看護
Keywords:先天性心疾患, 意思決定, 看護
【背景】先天性心疾患に対する治療成績が向上する一方で、予後不良な子どもが存在し、親は病気の受容と同時に様々な意思決定に直面する。今回、外科的治療が困難で予後不良とされた事例から、終末期における親の意思決定を支える看護を検討した。【事例】総肺静脈還流異常の手術予定であった0歳男児。重篤な病状や染色体異常による多発奇形から、外科的治療を見合わせる選択肢が提示され、親は絶望と悲嘆に暮れ「終わり」しか考えられない状況にあった。【方法】診療録から治療看護経過、カンファレンス内容を抽出し、後方視的に事例を検討した。個人が特定できないように配慮し、看護部の承認を得た。【結果】看護師は、親のニーズの把握に努め、親役割の実現(セカンドオピニオン、抱っこ等)、子どもの苦痛緩和というニーズの実現を図りながら、子どもと過ごせる環境を調整した。また、子どものQOLや最善について共に考えることで、親は「子どもの苦しみが少なく、穏やかな時間を一緒に過ごしたい」という意向を示し、手術はしないという選択肢に至った。気管切開や蘇生処置等の意思決定場面もあったが、十分な情報提供と理解度の確認、親の思いや価値観の把握を行い、医師との調整役を担った。また、カンファレンスでは、看護師が親の思いや価値観を代弁し、医学的適応やQOL、親の意向を勘案しながら、医療チームで子どもの最善について検討した。親は子どものQOLを重視し、気管切開は実施した上で、子どもに無益な蘇生処置は行わず親が不在でも看護師に看取りを委ねたいという意向を示し、穏やかな看取りを迎えた。【考察・結論】親は、役割遂行により希望を見出し、心理的支援を得て、意思決定に挑んでいた。看護師は、子どもと親の全人的苦痛の緩和を図り、治療やケア、生き方そのものに関する親の価値観やニーズを医療チームに反映させて、子どもの最善の利益に基づいた意思決定を支援する必要がある。