[TRP2-2] 先天性心疾患児の認知機能と適応行動に関する実態調査
Keywords:先天性心疾患, 認知機能, 適応行動
【はじめに】先天性心疾患児(CHD児)に対する治療技術の向上に伴い、CHD児の生存率は向上した一方、生存したCHD児の中で、運動発達の遅れや認知機能障害,日常生活における困難さなど抱えることが健常児と比べ多いことが国外の調査では報告されている。本邦でのCHD児の認知機能などの実態についての報告はこれまで少なく、今回、我々は先天性心疾患児の認知機能,日常生活における適応行動について明らかにすることを目的とし、研究を行った。【対象・方法】先天性心疾患と診断され,外科的加療が実施された5~12歳(8.3±2.7)の17名を対象に,日本版WISC-IV知能検査(WISC-IV)と日常生活における適応行動の評価であるVineland-II適応行動尺度(Vineland-II)を実施した.WISC-IVは全検査IQ(FSIQ)および4つの指標得点(標準得点:平均=100,SD=15)を,Vineland-IIは適応行動総合点と領域標準得点(標準得点:平均=100,SD=15)を算出した.また,WISC-IVとVineland-IIの関係についても検討を行った.【結果】WISC-IVのFSIQおよび指標得点の平均(FSIQ,83.9±15.8;言語理解,87.6±13.7;知覚推理,84.4±13.3;ワーキングメモリ-,88.9±20.6;処理速度,87.1±15.6),Vineland-IIの適応行動総合点と4つの領域標準得点の平均(適応行動総合点,78.1±16.1;コミュニケーション,81.8±17.5;日常生活,76.1±17.1;社会性,87.1±17.3;運動スキル,89.9±18.8)を算出した結果,対象者全体の平均がWISC-IVでは-1.0SD前後、Vineland-IIでは-1.0SDを下回る領域があった.また,Vineland-IIのコミュニケーションは,WISC-IVのFSIQと2つの指標得点(言語理解,処理速度)と有意な相関を示した(p <0.05).【結論】今回の結果から,国内の先天性心疾患児の中にも,認知機能や日常生活における適応行動に困難さがある児が一定数存在することが明らかとなった.