[TRP2-4] フォンタン循環不全末期の肝硬変・蛋白漏出性胃腸症の多量腹水に対し、外来で腹腔穿刺を反復した11歳男児
Keywords:フォンタン循環不全末期, 腹腔穿刺, 外来
【背景】フォンタン循環不全末期には、肝硬変・蛋白漏出性胃腸症による多量腹水貯留が問題となり、呼吸悪化、フレイル状態による転倒・骨折などの二次障害回避のために穿刺排液が必要になることがある。在宅の時間を可及的に確保するために、当院小児外来では通院での、外来での穿刺排液を反復した事例を報告する。院内の倫理審査委員会で、審査不要とされた。【症例】11歳男児。左心低形成症候群のフォンタン手術後で、三尖弁置換・再置換術を受けた。肝硬変と蛋白漏出性胃腸症のため、多量の腹水貯留を認め、二次障害回避のために頻回(週1-2回まで)の腹腔穿刺・排液を必要としていた。周期性嘔吐と随伴する心不全増悪等で、すでに入院は頻回であった。できるだけ在宅で過ごしたいという家族の希望に基づき、QOL確保のため、腹腔穿刺の外来での施行を検討した。入院中の、穿刺・排液は以下の手順でSpO2モニター下により施行し、安全性を確認しながら行った。1)臍と右腸骨稜を2:1に内分する点(エコーでも確認)を指標とし、20-30分前にキシロカインテープを貼付、2)その他の鎮静・鎮痛はせず覚醒下、3)24Gジェルコを穿刺・留置(疼痛反応はほぼ認めず)、4)11Kgの児で、約一時間かけて700-1000mLを排液してジェルコを抜去、排液中に25%アルブミン50mLを輸血した。外来施行に必要とされたのは、1)所属師長への依頼と人員確保、2)急変時対応を含めた手順書作成、3)必要物品とコスト確保だった。病棟・医務課・薬剤部と情報共有し、外来で腹腔穿刺を開始した。最後の入院までの3か月間に、合計5回の外来での腹腔穿刺・排液を安全に施行し得た。【考察】児と家族の協力を得て、外来での腹腔穿刺・排液は安全に施行できた。不安定な循環の本児の安全確保にあたり、覚醒下で施行できたことは安全施行の大きな要因と考えられた。当外来初の試みでだが、個々の患者に寄り添うために必要なプロセスと考えられた。