The 56th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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デジタルオーラル

多領域(看護)

デジタルオーラル多領域専門職部門(II)03(TRP03)
多領域(看護)

指定討論者:辻尾 有利子(京都府立医科大学附属病院)

[TRP3-2] 心臓手術を受ける子どもへ遊びを用いた個別支援の一例

樋口 靖子, 樋桁 千波, 服部 佳世子, 井林 寿恵 (京都府立医科大学 小児医療センター)

Keywords:遊び, 手術, 多職種連携

【背景】手術は子どもにとって侵襲度が高く、心身の負担が成長・発達の過程に影響をおよぼす可能性がある。子どもと家族のニーズに応じたサポートを行うためには多職種連携が不可欠であり、それぞれの専門性を活かし、保育士は遊びを用いて子どもと医療を繋げる役割を担っている。先天性心疾患により心臓手術を受けた5歳女児への支援について報告する。【方法】保育記録から支援内容を抽出し、後方視的に事例を振り返った。倫理的配慮として、ご家族の同意および所属看護部の承認を得た。【結果】遠方から家族と離れて入院生活を送る児と母が、日常を保つことができ安心して過ごせるように、遊びの環境を保障することに努めた。処置に対して恐怖心の強い児が、治療に前向きに取り組めるように多職種で協働し、『個別のプレパレーションツール』『処置前・処置中・処置後の遊び』を取り入れ、対処方法を児と一緒に考えた。手術後のPICUでの母子分離不安を見据え、家族の存在や思いを身近に感じることができるツールを母子製作し、心の準備と情緒の安定に繋げた。手術後には支援内容を再検討し、『手術前~手術後の遊び』へと連続性のある環境を整えることで、児は自己調整機能を発揮しながら処置や治療に臨むことができた。退院時には自分の乗り越えてきた過程が可視化された支援ツールを振り返り、「心臓が頑張った思い出」と表現し治療を肯定的に捉えていた。【考察・結語】児にとって遊びは、入院前の楽しくワクワクした感情や日常を取り戻すことができ、退院後の自身の姿や生活を想像し自己効力感が高まる特別な意味をもっていた。楽しい経験の積み重ねが、治療に向かう気持ちの後押しとなり、処置や手術が怖くて辛いだけの経験ではなく、治療や自己に対する肯定感を得る体験に繋がったと考える。子どもが直面する心理的負担への対処方法を子どもと家族、多職種と共に見出し個別性を重視した支援の継続が重要である。