[TRP6-1] 先天性心疾患手術における人工心肺適正灌流量の検討
Keywords:人工心肺, GDP, 灌流量
【緒言】近年,目標指向型管理という人工心肺管理法(GDP)が提唱され適正灌流量を再考することで,管理の標準化や治療成績の向上が期待されている.小児人工心肺管理では酸素需要の観点や側副血行路の発達から高灌流量が必要とされるが,当院の目標灌流量は他施設と比較し少ない傾向にあった.今回,目標灌流量の見直しを行い従来の管理法との比較,検討を行ったため報告する.【方法】2014年5月から2019年10月までの心房中隔欠損(ASD),心室中隔欠損(VSD)症例のうち15kg以下の45例を対象とした.従来法(1-4 :180,4-10 :150,10-15 :150(kg : mL/kg/min))21例をL群,変更管理法(1-3:200,3-5:180,5-8:160,8-10:150,10-12:140(kg : mL/kg/min))24例をH群とし両群間のCPB管理(年齢,体重,CPB時間,血圧,PI,DUF量,Lac,Glu,最低温度など)ICU管理(P/F比,挿管日数, Lac,Gluなど)について比較検討した.比較にはχ2検定とWilcoxon検定を用いて,P<0.05を有意差ありとした.【結果】両群間の比較では,年齢,体重,手術時間,術中尿量,血圧,輸血量などでは有意差は認められなかった.Glu(mg/dL) H群166[148-185]vs L群194[169-218],CPB中フロセミド投与量(mg) H群1.58[0.41-2.75]vs L群5.41[3.57-7.28],ICU入室時Lac値(mmol/L) H群8.2[7.3-9.4]vs L群10.6[9.1-12.1],ICU尿量(mL/h) H群26.8[19.1-34.4]vs L群14[10.2-17.7],クレアチニン値(mg/dL) H群0.25[0.22-0.27]vs L群0.29[0.25-0.33]の項目に有意差を認めた.【考察】目標灌流量を高く設定したことにより,腎血流量,酸素供給は維持され,尿量確保にもつながったと考える.尿量が確保されることで不必要なフロセミド量を減らすことが可能であった.また小児人工心肺管理においても低灌流量は嫌気性代謝亢進を惹起しGlu値の上昇だけでなく,ICU管理におけるLac値の上昇,更に急性腎障害発生にも影響することが示唆された.【結語】目標灌流量を再考し,従来よりも高灌流量とすることで良好な結果を得た.