第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション02(I-PD02)
小児肺高血圧に対する私たちの新しい取り組み(早期発見/治療、診断/鑑別、基礎研究、多職種連携など)

2021年7月9日(金) 13:30 〜 15:00 Track2 (Web開催会場)

座長:高月 晋一(東邦大学 医学部附属大森病院 第一小児科)
座長:石田 秀和(大阪大学医学部附属病院 小児科)

[I-PD02-3] 小児期特発性肺動脈性肺高血圧の早期診断に向けて―学校心電図研究から見えてくる新たな課題・仮説と研究計画ー

澤田 博文1,2, 三谷 義英1,2, 山岸 敬幸1,2, 土井 庄三郎1,2 (1.日本小児循環器学会学術研究委員会, 2.日本小児肺循環研究会)

キーワード:肺高血圧, 学校心臓検診, 早期診断

肺動脈性肺高血圧(PAH)は、BMPR2などの遺伝子変異や先天性心疾患などに伴い発症する予後不良疾患であり、小児の重要な死亡原因である。特発性/遺伝性PAH(I/H-PAH)は小児のPAHの57%を占めている。2000年代以降は、新規治療薬が開発され、I/H-PAHの生存率は、2年90%、5年75%となり予後の改善が認められるが、依然予後不良である。最近の研究では、12歳以上の患者において、早期(WHO機能分類II)のPAHに対する治療介入の有用性が報告され、早期診断の重要性が認識され、膠原病患者や遺伝子変異保有者などPAHのハイリスク群では、早期診断のためのスクリーニングが試みられている。日本ではPAHの学校心電図検診による診断が報告されており、2012-2015年に当学会学術課題研究としておこなった調査ではI/H-PAH患者の32%、学童以降の患者に限れば41%が学校検診を契機に診断されていた。学校検診で診断された患者は、症状などで診断された患者に比し、診断時の症状(WHO機能分類や運動耐容能)が軽症である一方で、肺循環血行動態平均肺動脈圧、肺血管抵抗)は同等であった。また、学校検診で診断された患者ではエポプロステノール治療必要性が少ないことが示された。診断時心電図では94%の患者が異常を示し、本症診断における心電図検診の意義を示した。研究では心電図検診で発見できる患者は“肺動脈圧は上昇するが、症状が乏しく、右室機能が保たれる”特徴的な集団であることを示したことも重要な知見であった。前研究では、実際の心電図所見とPAHの発見前の心電図所見の経過が不明である。現在、2020年度当学会研究委員会課題研究として、小児I/H-PAHの診断前学校心電図の検討を実施中である。本研究は、2005年1月以降に、新規に診断した、診断時年齢6歳以上18歳以下のI/H-PAH患者に対する後方視的観察研究であり、小児循環器学会専門医修練施設を対象に、PAH診断前の学校心電図記録を過去に遡って解析する。