[I-SY02-2] 小児・AYA期の大動脈弁狭窄に対する包括的外科治療戦略
キーワード:大動脈弁狭窄, 外科治療, 小児期
【目的】小児・AYA世代の大動脈弁狭窄(AS)に対する外科治療は、形成術、Ross手術、Konno-AVR手術、Ozaki手術など様々な選択肢があり、確立したものはない。【方法】1991年1月から2020年7月の期間にASに対して初回手術として外科治療を行った30例を対象とした。大動脈弁逆流(AR)単独症例は除外した。当科の基本方針は小児期では大動脈弁形成を第一選択として自己弁輪の成長を期待し、弁置換術(Ross手術含む)をできるだけ遅らせることである。生存率、合併症及び、再手術介入率について検討した。【結果】年齢は中央値で12(IQR:8-19)歳であった。6例(20%)に外科的大動脈弁交連切開術、2例(7%)にカテーテル大動脈弁切開術が先行治療として乳児期に行われていた。術式は、大動脈弁形成術(交連切開や弁尖のslicingを含む)が20例、機械弁置換術が5例、機械弁によるKonno-AVRが2例、Ross手術が1例、Ross-Konno手術が1例、Ozaki法が1例であった。術後早期死亡はなく、遠隔期に1例失った。観察期間は中央値で106(58-136)ヶ月であった。エコーによる大動脈弁位での流速は2.7(2.1-3.3)m/sであり、中等度以上のARを3例に認めた。塞栓の合併症はなかったが、機械弁によるKonno-AVR症例の1例で脳出血を認めた。再手術は5例に行いその内訳は、大動脈弁再形成術が2例、機械弁によるKonno-AVRが2例、Ross手術が1例であった。カプランマイヤーによる再手術回避率は、1年100%、5年93%、10年80%であり、大動脈弁形成術とその他の手術で有意差は認めなかった(p=0.565)。【結論】当科で小児期に第一選択としている大動脈弁形成術は、再手術回避率の観点からも妥当な選択と考えられた。しかしながら中等度以上のARを有する症例や狭小弁輪を有する症例においては、再形成術には限界があるため、Ross手術を含む弁置換術やOzaki法の選択が必要と思われる。