[I-SY02-4] 小児および青年期の大動脈弁狭窄に対する治療戦略: 人工弁置換かRoss手術か
キーワード:小児大動脈弁狭窄, Ross手術, 人工弁置換
【背景・目的】小児および青年期の大動脈弁狭窄(AS)に対する弁形成の長期成績は不明で、根治手術としては人工弁置換(AVR)またはRoss手術が選択されることが多い。当院での両術式の成績を検証した。平均観察期間8.4年。【対象】1998-2020年にASに対してAVRまたはRossを行った68例。AVR群17例Ross群51例で、生存率、移植弁関連イベント、再手術について検証した。【結果】時代による両術式の比率に差はなく、Ross非選択の理由は肺動脈弁が使用不能6例、患者希望4例、大動脈基部拡大2例、その他5例であった。手術時年齢はAVR群が年長で(AVR群 vs Ross群;中央値13.5才 vs 9.1才)、AVR群では合併心疾患が多かった。先行バルーン拡張術(BVP)はRoss群で多かった(12% vs 47%)。手術においてはAVR群で弁輪拡大を多く必要とし(76% vs 45%)、使用した人工弁はSJM regent7例、SJM HP5例、On-X3例、Mosaic2例で、サイズは中央値19mm(17-25mm)であった。Ross手術は全例full root法で行い、右室流出路(RVOT)はePTFE製3弁付き導管で再建した。reduction aortoplastyを6例に、人工血管によるrappingを2例に併施した。早期死亡はRoss群で2例(いずれもBVP後の高度ARによりショックで来院)、遠隔死亡はなく、累積生存率に差異はなかった。遠隔期イベントはAVR群6例(脳梗塞、血栓弁各2例、pannusによるstuck valve、人工弁感染各1例)、Ross群2例(autograft機能不全2例)あり、再手術はAVR群4例、Ross群2例であった。15年の移植弁関連イベント回避率(70% vs 91%)、大動脈弁再手術回避率(60% vs 91%)ともにRoss群が良好であった。AVR群では低年齢が再手術の危険因子であったが、Ross群では年齢による差異はなかった。Ross群のRVOT再手術回避率は15年63%であった。【結語】Ross手術は高い再手術回避率、低いイベント発生率を示した。RVOT再介入の問題は残るが、低年齢児ではRoss手術を選択することが妥当と考えられた。