[I-SY03-1] Developmental Biology of Paediatric Cardiomyopathy
Keywords:心筋症, 発生学, 分子病態
心筋症は、“心機能障害を伴う心筋疾患(日本循環器学会「心筋症診療ガイドライン2018年改訂版」)”と定義される。近年,家族性の心筋症を中心に、心筋症に関連した多くの遺伝子変異が同定されている。しかしながら、特定の遺伝子の変異と心筋症としての表現型(肥大型・拡張型・拘束型など)には明確な強い相関がないことも多く、一般的には、遺伝的素因にさまざまな環境因子が加わることによって表現型が規定されていると考えられている。すなわち、多くの提唱されている主要な原因は必要条件であり、特定の表現型に対する十分性は、多くが不明のままである。マウスなどのモデル動物を用いた心筋症発症に対する知見も集積されてきたが、臨床遺伝学的知見との間にはギャップがあるものが多い。また、遺伝子異常による心筋症では、胎生期に心筋が分化する時点から、すでに何らかの異常が生じている可能性も意識すべきであると思われる。そうした観点から、ヒト多能性幹細胞を用いた基礎研究は、今後は益々重要であると考えられるが、そのような幹細胞による分化誘導系の実験は、いつもin vivoを反映しているとは限らない。近年、発展がめざましいメカノバイオロジーからのアプローチも、注目すべき視点であろう。ここでは、小児期の心筋症について、発症に至るまでの分子過程を系統的かつ包括的に理解する上で、今後私達にとって必要と考えられる視点について、上述したような観点から議論を試みたい。