[I-SY03-5] ヒト心筋前駆細胞を用いたミトコンドリア活性化心筋前駆細胞の製造および、心筋虚血再灌流モデルに対する細胞移植の治療効果の検討
キーワード:心筋幹細胞移植療法, ミトコンドリア, ドラックデリバリーシステム
【背景】心筋幹細胞移植は、心不全に対する有望な治療法として臨床試験も多数行われており、有用性が認められている。一方で、現時点で心不全への細胞移植療法の問題点があり、臨床応用には至っていない。我々は、ミトコンドリア(Mt)標的ドラックデリバリーシステム(DDS)であるMITO-Porterを用い、移植細胞のMtに選択的に薬剤を送達することでMtを強化したMt活性化幹細胞(MITO cell)を作成した。これまでに本学会において、ドキソルビシン心筋症、虚血再灌流モデルマウスに対してマウス由来のMITO cell移植を行い、心不全発症の予防・治療効果を報告している。【目的】本研究では、ヒト心筋前駆細胞(human cardiosphere-derived cell : hCDC)を単離し、それに対し新規機能性分子Xを搭載したMITO-Porterを用いてhuman MITO cell(hMITO cell)を製造した。さらに、ラット心筋虚血再灌流モデルに対しhMITO cellを用いた細胞移植療法による治療効果の検討を行った。【方法】右室流出路狭窄を伴う先天性心疾患根治術時の切除心筋からhCDCを単離しMITO-Porterを用いてhMITO cellを製造した。hMITO cellにおける酸素消費速度にてMt機能を評価した。ラット虚血再灌流モデルマウスを作成し、hCDCおよびhMITO cell移植を行い、4週後の心臓機能評価を行った。【結果】hMITO cellにおける酸素消費速度はhCDCと比較し上昇した。虚血心筋へのhMITO cell移植は、非移植群、hCDC群と比較し術後の体重減少の程度が軽減し、心エコー検査による心機能評価では改善を示した。【考察】hMITO cellを用いた細胞移植療法は既存の方法に比べ治療効果を認めた。移植細胞のMtを強化することで治療効果が増強したと考えられる。【結論】本研究は、Mtへの分子送達がヒト心筋幹細胞移植療法の成績向上に寄与する可能性を検証する世界初の試みである。 hMITO cellは治療効率の向上の可能性を示唆しており、細胞移植療法の問題点を解決できる可能性がある。