第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム04(I-SY04)
小児循環器領域のゲノム医学

2021年7月9日(金) 10:40 〜 12:10 Track3 (Web開催会場)

座長:山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部小児科)
座長:横山 詩子(東京医科大学細胞生理学分野)

[I-SY04-3] 家族性先天性心疾患における全エクソーム解析による原因遺伝子探索

加藤 太一1, 早野 聡1,2, 山本 英範1, 森本 美仁1, 郷 清貴1, 深澤 佳絵1 (1.名古屋大学大学院医学系研究科成長発達医学, 2.中東遠総合医療センター小児科)

キーワード:次世代シークエンサー, 全エクソーム解析, 先天性心疾患

【背景】先天性心疾患(CHD)の多くは多因子遺伝によると考えられているが、単一遺伝子異常に由来するものもある。我々は常染色体優性(AD)遺伝をはじめとした単一遺伝子異常の可能性が示唆される家族性CHDの家系に対して、全エクソーム解析を用いて原因遺伝子探索研究を行っており、その手法および成果を報告する。【方法】対象は中隔欠損の4家系(AD遺伝3家系、同胞例1家系)と、Williams症候群を伴わない大動脈弁上狭窄(SVAS)の7家系(AD遺伝5家系、同胞例2家系)。書面で同意取得後、唾液または血液から抽出したDNAで全エクソーム解析を行った。サンガー法またはMLPA法で共分離を確認した。病態解明が不十分な原因遺伝子に対しては培養細胞を用いて機能解析も行った。【結果】中隔欠損のうちAD遺伝の3家系では、それぞれTBX20の新規9塩基欠失、ACVR2Bの新規ミスセンス変異、ABL1の新規ミスセンス変異が同定された。ABL1異常に由来する家族性CHDは比較的新しい疾患概念であり発症メカニズムは未解明であったため、HEK293細胞を用いた強制発現実験においてリン酸化プロテオーム解析を行ったところ、心疾患発症にUFD1が関与する可能性が示唆された。SVASの7家系中3家系でELNの新規ヌル変異が、また他の3家系ではELNの単一あるいは複数エクソンの欠失がそれぞれ同定された。いずれの家系においてもサンガー法またはMLPA法で共分離を確認した。原因遺伝子の同定ができなかった2家系はいずれも同胞例であった。【考察】全エクソーム解析により原因遺伝子が判明したのは11家系中9家系であり、AD遺伝に限定すれば全家系で判明した。SVASにおいてはこれまで原因不明とされてきた家系の多くで、サンガー法で同定不可能なELN微小欠失があることが示された。また、機序解明が不十分なABL1に由来するCHDの発症メカニズムの解明にもつながった。全エクソーム解析は原因遺伝子同定、発症メカニズムの解明に非常に有用である。