[I-YB01-1] COVID-19の病理と病態形成機構
キーワード:COVID-19, 病理, SARS-CoV-2
新興感染症である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国・武漢における最初の症例が報告されて以降、世界中へ急速に拡大した。COVID-19流行当初から多くの治療薬候補が提案され、迅速な臨床開発を経て承認されたものもあるものの、いずれの効果も限定的であり、さらなる治療法の改善が求められている。このような新しいウイルス感染症に対して有効な治療法を開発するためには、病態の理解が不可欠である。特に、急性ウイルス感染症においては、動的に変化するウイルスの臓器内、組織内局在とウイルス感染に伴う組織形態変化を評価し、臨床症状との関連を明らかにしていくことが病態形成機構の理解に重要となる。しかし、通常のウイルス学的検査や画像診断では、病原体の体内局在や組織変化を詳細にとらえることは不可能であり、感染症の発症病理解明には患者の組織検体を用いた病理学的な解析が不可欠である。国立感染症研究所では国内の医療機関等より依頼されCOVID-19患者の組織検体を用いたウイルス検索を行っている。これまでに剖検組織、ネクロプシー組織、肺生検組織や手術検体等の数十症例のCOVID-19肺組織を検索しているが、多くの場合、発症からの日数が経過するにつれて肺組織内のウイルス量は低下していき、死亡までの日数が50日以上経過している場合は、ウイルスは検出されなかった。また、肺組織以外では、ウイルスが存在しない病変も見られ、病態形成においてはウイルス感染そのものの影響だけでなく、ウイルス感染に伴う宿主応答が深く関与していることが考えられた。しかしながら、その宿主応答の詳細は未だ不明であり、今後の研究が必要と考えられる。本講演ではCOVID-19における肺炎やその他の病態について、主に病理解剖を通じて明らかにされた病理学的特徴を交えながら解説する。