第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション03 パネルディスカッション(I-YB03)
診断に役立つ心エコー検査の最前線

2021年7月9日(金) 15:10 〜 16:40 Track3 (Web開催会場)

座長:新居 正基(静岡県立こども病院 循環器科)
座長:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

[I-YB03-2] 腹部大動脈にみられる大動脈縮窄パターンは何を見ているか

桑田 聖子, 齋藤 寛治, 滝沢 友里恵, 佐藤 啓, 中野 智, 齋木 宏文, 高橋 信, 小山 耕太郎 (岩手医科大学 医学部 小児科学講座)

キーワード:CoAパターン, 腹部大動脈血流波形, 大動脈症

【背景】腹部大動脈血流波形は大動脈縮窄検出のスクリーニングに用いられるが、その基準と臨床的意義は明確ではない。
【方法と対象】専門技師により評価された波形のうち、1) 下行脚緩徐化を伴う典型的縮窄パターン、2) 下行脚の減衰はないがQRS波から収縮期血流ピーク(pulse delay: PD) や立ち上がり時間(acceleration time : AT)延長を認める収縮期波形異常を判定、抽出した。大動脈修復後に血流波形に異常を認めない症例をコントロールとし、3群間で波形の特徴を比較検討した。
【結果】典型的縮窄パターン(CP: n=22)、収縮期波形異常 (SA: n=23)、コントロール (C: n=84)のうち、CPは専門技師により抽出されたが、SAは所見として記載はなかった。CP症例のうち実際の大動脈狭窄は16例で、残りの6例中3例は重複大動脈弓に伴う動脈管膨大部や異型鎖骨下動脈の膨隆等の大動脈弓部に余剰管腔構造を認めた。CP、SA、Cに分類される腹部大動脈波形は、それぞれPD (8.2±2.5, 9.8±1.5#, 8.1±1.7 ms)、AT/ET比 (0.41±0.13, 0.41±0.1, 0.36±0.07*)、拡張期/収縮期血流速度比 (0.23±0.13#, 0.12±0.12, 0.07±0.06)、VTI比 (1.9±2.9#, 0.35±0.34, 0.2±0.21)であり、CPは拡張期/収縮期VTI比で、SAはPDで差別化が可能であった。大動脈弓部の血流速度(3.1±0.65*, 2.3±0.6, 1.9±0.49 m/s)、最小血管径(0.37±0.05#, 0.54±0.08, 0.56±0.03 /大動脈弁輪径)、実測のpeak to peak圧較差(13.4±18.4*, 10.5±13.9#, 2.0±3.7 mmHg)から、CPとSAはともに血行動態異常が示唆された。CPと比較しSAでは大動脈弁 (p<.05)が太く、大動脈近位側の病態も示唆された。(*: p< .05, #: p< .01)
【結論】腹部大動脈血流波形異常には大動脈弓だけでなく、大動脈症と関連し、上行大動脈拡張や血管硬化は将来的に中枢神経系循環や圧反射を介して全身臓器循環に影響しうる。従って、先天性心疾患の長期管理に重要な役割を担う可能性がある。