第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望セッション

会長要望セッション03 パネルディスカッション(I-YB03)
診断に役立つ心エコー検査の最前線

2021年7月9日(金) 15:10 〜 16:40 Track3 (Web開催会場)

座長:新居 正基(静岡県立こども病院 循環器科)
座長:増谷 聡(埼玉医科大学総合医療センター 小児科)

[I-YB03-3] 顕性WPW症候群における心室非同期が左心機能へ与える影響のスペックルトラッキング法による検討

武井 黄太1, 瀧聞 浄宏1, 赤澤 陽平1, 米原 恒介1, 大日方 春香1, 沼田 隆佑1, 小山 智史1, 正本 雅斗1, 岩渕 恭子2, 齊川 祐子2, 安河内 聰1,2 (1.長野県立こども病院 循環器小児科, 2.長野県立こども病院 エコーセンター)

キーワード:WPW症候群, スペックルトラッキング法, 心室非同期

【背景】WPW症候群において頻拍発作の無い症例でも心室非同期による心機能低下を認めることが報告されている。【目的】WPW症候群における心室非同期の左心機能へ与える影響についてスペックルトラッキングエコー法(STE)を用いて検討すること。【方法】対象は2013年以降に当院で心エコー検査を行った心形態異常を伴わない顕性WPW症候群17例中、STEによる解析を行った13例(9.5±4歳、男8例)。STEは心エコー装置Vivid E9/E95(GE社製)で記録した画像を解析ソフトウェアEchoPAC(GE社製)を用いて解析し、乳頭筋レベル短軸断面と四腔断面において中心/円周/長軸方向の最大Strain値(RS/CS/LS)とその値までの時間(tRS/tCS/tLS)をそれぞれ6分割したセグメント毎およびCS/LSは全体の値(GCS/GLS)を収集し、tRS/tCS/tLSは6セグメント内の最大と最小の差(TD)と標準偏差(SD)を算出した。また、biplane法による左室駆出率(LVEF)、心電図のQRS幅、Kent束の位置も収集して検討した。【結果】LVEFは59.4±6.4%で、LVEF<55%の症例が3例(rEF群)あった。Kent束は右側7例、中隔1例、左側5例で、このうちrEF群では左側壁・中隔1例、右前側壁2例であった。LVEFはGCS/GLSの他、tRS-TD(r=-0.72、p=0.005)、tRS-SD(r=-0.68、p=0.009)、QRS幅(r=-0.69、p=0.009))と有意な負の相関を示した。rEF群では右前側壁Kent束の症例で中隔、左側壁・中隔Kent束の症例では下壁を中心に、収縮早期にRSの1峰目のピークや早い立ち上がりといった壁運動異常を認めた。rEF群では2/3例でカテーテルアブレーション(RFCA)に成功し、LVEF、壁運動異常は正常化した。【考察】既報では顕性WPW症候群においてLVEFは低値で、低下例では心室非同期を認め、RFCA後に上昇するとされている。本研究も同様の結果であり、壁運動異常と左心機能の関係がより明確になったと考えられる。【結論】顕性WPW症候群では心室非同期の程度により左心機能に影響を与える。