[II-SY09-3] 心疾患を持つ患者さんが安心して出産するために、小児循環器科医ができること
キーワード:先天性心疾患, 心臓病合併妊娠, QT延長症候群
【背景】成人患者の増加と共に、心疾患合併妊娠・出産のサポートは重要性を増している.【目的と方法】当院で2000‐2020年の20年間に、循環器小児科が妊娠・分娩管理に関わった140分娩について、1)患者背景 2)妊娠前後の診療 3)周産期 4)心イベントの有無5)予後について後方視的に検討した.【結果】88人が140分娩を経験し、1) 出産時年齢16‐36(中央値26)才、で平均1.7人の児を出産した.先天性心疾患76(VSD 24, TOF 13, MR 8, TGA 8, AVSD 6, ASD 5, AR 3,単心室2など) , 不整脈8(LQT 6, CAVB 2), 心筋症3, 川崎病後冠動脈合併1で、術後の61例は各根治術後の他、Fontan 2, 単心室septation 2, ダブルスイッチ1, Mustard1などを含み、未手術は15(MR 7, VSD 5, AR 3)例だった.2) 挙児希望を受けて行ったBAP1、FontanのLT leak 閉鎖術が1.28人が投薬を受けており、妊娠後ACE阻害薬は中止、β-blocker・CB・Digitalisは継続された.妊娠の連絡は初期15週までが半数を占め指導できたが、21%は妊娠後期の受診だった.3) 当院での出産が8割、確認できた119名は、経腟分娩 91、帝王切開28で、心疾患適応で分娩方法が決定したのは6名.平均在胎週数は38.4週で、児の平均体重は2779g、母体入院日数の中央値は7日で、最長は切迫傾向のあったFontan患者の127日だった.4) 心イベントは11名、心不全悪化 6、不整脈3など.治療追加は14名で、産後に薬剤調整 9、PM関連3、妊娠帰結1など.5) 産後心不全が悪化した6名中2は治療強化の継続を要した.LQTの2名が産後2カ月、5年時、自宅で突然死された.【考察】多くの心疾患合併妊娠は安全に経過し終了していた.妊娠前から将来を踏まえた治療計画や指導が重要である.ハイリスクケースを中心に心症状の変化に注意し、細やかなサポートが必要だが、適切な治療で乗り切ることが期待できる.育児負担が増える産後にも心事故発生のリスクがあることを忘れてはいけない.