[III-AHAJS-1] Current status and future aspects of therapeutic strategies for children with end-stage cardiac failure in Japan
Keywords:重症心不全, 心臓移植, 補助人工心臓
1968年の和田心臓移植後、日本国民の移植医療への不信感が強く、30年近く心臓移植の道は閉ざされていたが、1997年臓器移植法が施行され、小児の重症心不全患者についても門戸が開いたと思われた。しかし、法律が生前の書面による意思表示を必須としたため、15歳未満の脳死臓器提供が実施できず、小さな小児は海外渡航移植しか生きる道がなかった。1999年2月に成人心臓移植が再開し、2000年3月には成人女性からの10歳未満の男児への心臓移植が実施されたが、以後ほとんど小児心臓移植は行われなかった。当学会移植委員会が中心となり、重症心不全患者の実態調査を行い、法改正の活動した結果、2010年7月に改正臓器移植法が施行された。その結果、小児の心臓移植件数が徐々に増加し、2019年には国内での移植件数が、海外渡航移植件数を上回った。小児重症心不全患者のもう一つ治療戦略として左室補助人工心臓(VAD)があるが、従来は体外設置型のニプロVADしかなかった。2015年にEXCOR Pediatricsが保険収載され、乳幼児の重症心不全患者の予後が著しく改善した。さらに2018年にはHVADが、2019年にHeartMate3が保険償還されたことにより、体格の大きな小児例は、体外設置型VADではなく、植込み型VADを装着できるようになり、徐々にではあるが、在宅管理される小児例、さらには通学できる小児例が増加してきている。本年5月にHeartMate3のDestination Therapyが保険収載されたので、今後心臓移植の適応とならない、悪性腫瘍根治後5年以内、腎機能障害などの合併症のある小児重症心不全患者に対しても植込み型VADを装着できるようになり、さらに多くの小児重症心不全患者を救命できるようになった。以上の歴史を踏まえながら、小児重症心不全に対する治療戦略の現状と展望について述べる。