[III-SP-2] 循環器病対策における先天性心疾患患者の課題と今後への期待
キーワード:社会的自立, 切れ目のない支援, 福祉
医学の進歩により救われてきた先天性心臓病児は大人になり、社会の中で活躍する時代を迎えている。しかし、子どもたちは、心臓病をかかえながら成長していくライフステージで、多くの困難にぶつかりながらも生き抜いていかなくてはならない。2014年に成立した難病法により先天性心疾患の一部が指定難病の対象となり、同時に小児慢性特定疾病児童等自立支援事業が制度化された。その後、移行期医療を推進するため移行期支援センターの設置やコーディネーターの配置が始まったが、現在でも全国7箇所に止まっている。一方、2018年循環器病対策の一環として「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立。国の協議会において「基本計画」が策定され、2020年末から都道府県協議会の設置と「基本計画」の検討が始まっている。当会では、先天性心疾患の患者・家族の立場から、計画策定に向け「子どもから大人への切れ目のない医療的、福祉的支援の充実」を求めて意見や要望してきた。今後も、「成人先天性心疾患を治療できる診療体制と移行支援の推進」と「心臓病児者が自立した生活を送れるよう、生涯を通じた患者・家族への福祉の充実」が必要であることを今後も提起していきたい。先天性心疾患患者の課題は、遠隔期や移行医療のみならず、教育や就労、重複障害、医療・福祉制度の谷間に置かれている患者がいるなど多様である。さらにそれらは地域的な差異も大きい。解決のためには、小児慢性特定疾病や難病対策、循環器病対策等を横に繋いだ総合的支援が求められている。その実現には地域における患者団体と医療者との連携が重要であり、さらに循環器内科医師への理解啓発が必要である。そして、患者が自立した人生を送れるように、医療と教育、福祉、就労等の多領域での連携が十分に図られていくことを望むものである。