[III-SY10-3] 当院における小児補助人工心臓治療の経験:合併症とその対策
キーワード:小児補助循環, 長期管理, VAD合併症
当院では、2016年より15歳未満の小児重症心不全症例11例に左(体)心室補助人工心臓を装着している。基礎疾患はDCM4例、LVNC3例、慢性心筋炎1例、cAVSD術後1例、TCPC術後1例、劇症型心筋炎1例、装着時平均年齢4.93±5.10歳:月齢2ヶ月-14.9歳、平均体重15.06±13.10kg:4.1kg-44.7kg。EXCOR7例(pump size 10ml:2例、15ml:3例、25ml:2例)、Nipro VAD2例、EXCOR送脱血管を使用した遠心VAD2例。のべ補助期間は4272日(11.7年)、平均388.36±331.62日(中央値376日 2-896日)。予後は死亡2例(Nipro VAD 1例、EXCOR送脱血管を使用した遠心VAD1例)、渡航移植1例、国内移植2例、離脱2例、補助継続中4例(EXCOR3例、EXCOR送脱血管を使用した遠心VAD1例)。Device関連合併症であるEXCOR pump交換は、のべ20回(メンブレン損傷7回、pump内血栓4回、メンブレン異常3回、pump size up2回、送血管損傷2回、pump内弁逆流1例、使用1年の定期交換1回)、Nipro VAD pump交換は4回、遠心VAD回路交換6回、遠心VAD回路からECMO回路への交換が1例。特殊なDevice関連合併症として送脱血管コネクティングキット使用後の送血管損傷を2例(同一症例)に認めた。その他の問題として、母親に対する精神科医師による定期的カウンセリングが必要となったケースや、医療スタッフとの意思疎通不足によると思われる特定の医療スタッフの関与拒否などを経験している。当院では送脱血管の固定を工夫する事で、送脱血管挿入部感染による侵襲的な処置が必要となった症例や、pump内血栓による塞栓症例は認めていないが、頭部打撲による脳出血、脳動静脈奇形に伴う脳出血、凝固過延長によると思われる脳出血、DICに伴う脳出血をそれぞれ1例ずつに認めている。上記の合併症の経験から、小児VADチーム内での情報共有を積極的に行い、チーム一丸となって様々な対策を行ってきた。この対策方法を提示し、より良い補助循環治療に向けて、ディスカッションの一助としたい。