[OR1-4] 完全大血管転位症1型の重度低酸素症と異常分娩の関連性の検討
キーワード:大血管転位症, 周産期管理, 低酸素症
【背景】完全大血管転位1型(TGA(1))では酸素飽和度(SpO2)は心房間の短絡血流量により規定され, 卵円孔径(FO)と肺血流に心房間血流量は影響を受ける。また児原因の帝王切開や吸引分娩など異常分娩で出生した場合はアシドーシスや低酸素症のために肺血流低下して重度の低酸素症となるが在胎35週以降の正常新生児では酸素や陽圧換気にて対応可能であり人工呼吸管理を要することはまれである。TGA(1)では酸素や陽圧換気では低酸素症は改善せずに人工呼吸管理が必要になることを多く経験する。【目的】TGA(1)の異常分娩と重度低酸素症の関連性について検討した。【方法】2015年から2020年に当院NICUに入院したTGA(1)34例を対象とし, 異常分娩の有無で2群に分け出生週数(GA), 出生体重(BW), Apgar Score5分値(AP), 上下肢SpO2, 週数で補正したFO径とPDA径を比較した。出生週数35週未満, 他施設でのBAS例は除外した。重度低酸素症は上肢SpO2<70%, 異常分娩は児要因(切迫早産、子宮内感染、胎児機能不全)の帝王切開又は吸引分娩と定義した。次に多変量解析にて異常分娩とFO径を説明変数として重度低酸素症と短期予後不良(予定外Jatene術と新生児死亡)の関連性について検討した。【結果】対象34例中, 異常分娩は10例(29%)で上肢SpO2, 下肢SpO2は有意に低く人工呼吸管理は有意に多かったが, GA, BW,FO, PDA, 胎児診断率には差はなかった。多変量解析では重度低酸素症には異常分娩およびFO径はともに関係していた。オッズ比(95%信頼区間, p値)はそれぞれ0.023(0.01-0.58, 0.02), 0.27(0.10-0.72, 0.01)であった。短期予後不良にはFO径および異常分娩には関連は認めなかった。【まとめ】異常分娩で出生したTGA(1)症例では生後に重度低酸素血症を引き起こす可能性が高い。胎児診断したTGA(1)の周産期管理において分娩中に問題がある場合は重度低酸素症を回避降るために速やかに帝王切開へ切り替えることは必要である。