[OR10-1] 先天性心疾患における血行動態異常が脳内酸素飽和度に及ぼす影響
Keywords:脳内酸素飽和度, 低酸素, 肺体血流比
【背景】脳内酸素飽和度測定は動脈血酸素飽和度(SaO2)と静脈血酸素飽和度(SvO2)の混合血酸素飽和度(0.3SaO2+0.7SvO2)を反映し、神経学的予後に影響を及ぼす因子である。先天性心疾患では血流の短絡の状態により低心拍出や低酸素血症をきたすが、その血行動態異常が脳内酸素飽和度に及ぼす影響は明らかでない。【目的】先天性心疾患における血行動態異常が脳内酸素飽和度(ScO2)に及ぼす影響を明らかにする。【方法】2019年10月から2021年1月の間に、カテーテル検査時のモニタリングとしてScO2測定(Root® with SedLine® and O3TM, Masimo)を行った短絡のある先天性心疾患90例(0-20歳)について、後方視的に検討を行った。1) ScO2と経皮酸素飽和度(SpO2)、体血流量(Qs)、肺体血流比(Qp/Qs)、体表面積当たりの酸素供給量(DO2)との相関を解析した。2) 対象をSpO2の値により低酸素群(SpO2 < 93%, 46例)と非低酸素群(SpO2 ≧ 93%, 44例)に分け、ScO2、Qs、DO2を比較した。【結果】1) ScO2はSpO2と正の相関(r = 0.45)を示したが、Qs、Qp/QsおよびDO2とは相関を示さなかった(それぞれr = 0.02、0.04、0.14)。2) 患者背景として、低酸素群と非低酸素群で年齢、体表面積に差はなかった。低酸素群では非低酸素群と比較して、ScO2は有意に低値であったが(ScO2 = 58.3 ± 6.3 vs 62.9 ± 4.7%)、QsとDO2は有意に高値であった(Qs = 4.4 ± 1.1 vs 3.9 ± 0.8 L/min/m2、DO2 = 662.3 ± 147.6 vs 574.3 ± 88.7 ml/min/m2)。【考察】脳内酸素飽和度は、短絡による血流の変動よりも動脈血酸素飽和度に影響を受けることが明らかになった。低酸素群では体血流量と酸素供給量は増加しているが、脳内酸素飽和度の維持には至らないと考えられる。