[OR10-4] 収縮末期圧容積関係の容積切片の正確な推測方法の開発
Keywords:収縮末期圧容積関係, 容積切片, 心収縮指標
【背景】負荷変化時の収縮末期心室圧容積関係(ESPVR)の傾きは、負荷条件を加味した心収縮性の指標であり、収縮期の心室硬化度も内包する。さらに後負荷とのCoupling評価において循環変動の予測を可能にする優れた指標である。しかしながら、実臨床においては安定して十分な負荷変化を得ることが必ずしも容易ではないことやESPVRの非直線性と相まって、ESPVRの容積切片(Vo)はしばし非生理的な値を呈する。Voの正確な推定が可能であれば、真のESPVRを求めることが可能で非常に有用となる。今回我々は、平均駆出圧容積関係(EMPVR)の概念を導入し、正確なVoを推察する斬新な方法を開発した。【方法】意識下成犬の下大静脈(IVC)閉塞中に、心室圧容積関係を構築しESPVR、前負荷動員心室仕事関係(PRSW)を算出した。心室仕事量(SW)を一回拍出量(SV)で除した値を平均駆出圧(Pm)と定義し、PRSWの傾きをMsw、容積切片をVwとするとSW=Msw×(Ved-Vw)からPm-Msw=Msw/SV(Ves-Vw)が 導き出される(Ves:収縮末期容積)。この式は、EMPVRは必ず座標(Msw,Vw)を通過することを示すため、EMPVRにおける収縮性指標Ees’はMsw/SVと定義でき、IVC閉塞中の随時Ees’から随時のVoをVes-Pm/Ees’として算出できる。その最大値を生理的Voとして求めた。【結果】1)EMPVRから求めたVoの平均値(25±3.3)は、直線回帰ESPVRから求めたVo(19.6±4.7)、2次関数、対数関数による曲線回帰ESPVRから求めたVo(21.9±4.5、21.3±4.1)よりすべて有意に大きく(p<0.01)、分散も少なかった。2)曲線回帰によるVoは時にVwを上回り非生理的な値を示した。3)EMPVRのVoとVwの差(SWが0になるSV)はIVC閉鎖最終SVの値より有意に小さく、本方法論の妥当性を支持した。【結論】本方法論は長年の懸案であったESPVRの限界を克服する斬新なものと思われる。