第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

カテーテル治療

デジタルオーラルI(OR11)
カテーテル治療 1

指定討論者:江原 英治(大阪市立総合医療センター)
指定討論者:矢崎 諭(榊原記念病院)

[OR11-4] 本邦におけるバルーン心房中隔裂開術の実施状況: JCICレジストリからの解析

犬塚 亮1, 金 成海2, 松井 彦郎1, 藤井 隆成3, 小林 徹4, 加藤 温子5, 富田 英3 (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.静岡県立こども病院 循環器科, 3.昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター, 4.国立成育医療研究センター 企画運営部, 5.国立循環器病研究センター病院 小児循環器内科)

キーワード:カテーテル治療, 全国調査, 合併症

【背景】バルーン心房中隔裂開術(BAS)は重症先天性心疾患における出生早期の救命処置として重要な役割を担っている。Pull back法と、血管・弁形成用バルーンカテーテルを用いたstatic BAS法があるが、後者は適用外使用であることもあり安全性などの情報が乏しい。【方法】2016-2018年の間にJCIC-registryに登録された588件のPull-back BASと247件のstatic BASの実施状況と有害事象頻度について解析しそれらを比較した(Pull-back vs Static BASの順序で記載)。【結果】実施時日齢28以下が440 vs 84件(75 vs 34%)、29日以降1歳未満が141 vs 111 件(24 vs 45%)とStatic BASはより高年齢で施行されていた(p<0.001)。診断は左心系閉塞性疾患33vs 14件(5.6 vs 5.7%),大血管転位310 vs 75件(53 vs 30%),右心系閉塞性疾患222 vs104件(38 vs 42%),その他 23 vs 54件 (3.9 vs 22%)と、Static BASは大血管転位以外での施行が多かった(p<0.001)。緊急カテーテルが192 vs 58件(33 vs 24%, p<0.001)と緊急の状況ではPull back BASが施行される傾向にあった。Pull-back/static 共に98-99%の症例で手技を完了できたが、初回介入をPull-backで行った症例の7%、Staticで行った症例の27%においてその後に再度カテーテル治療を要していた。有害事象の発生は25 vs 20件(4.3 vs 8.1%, p=0.03)、その内治療を要する重篤な有害事象は5 vs 8件(0.9 vs 3.2%, p=0.03)に認め、予定外の外科手術を要したのは 2 vs 5件(0.3 vs 2%、p=0.03)とStatic BASで多い傾向を認めた。【結論】保険適用外であるStatic BASは既にBAS全体の3割を占めていた。BASにおける有害事象発生率は全体として低いが、StaticではPull-backに比べて施行年齢が高い割に有害事象が多い傾向を認めた。今後Static BASがPull-back BASが行えない状況における代替治療として行われる可能性があるが、有害事象発生率の違いなどに注意が必要と思われた。