[OR11-5] 本邦におけるバルーン拡張術の実施状況:JCICレジストリからの解析
キーワード:デバイスラグ, 経皮的バルーン拡張術, カテーテル治療
【背景】血管あるいは弁に対するバルーン拡張術は最も多く行われているカテーテル治療である。現在本邦には12mmより大きい大口径高耐圧バルーンカテーテルは存在しないため、しばしば大血管や弁狭窄に対し2本以上のバルーンを用いて拡張を行う必要がある。本研究の目的はバルーン拡張術の実態を把握し、新規医療機器開発につなげることである。【方法】2016~2018年の間にJCIC registryに登録されたバルーン拡張術6726件の有害事象のリスク解析を行い、サブグループ解析としてsingle balloon使用群(SB群)6221件とdouble/triple balloon群(DB群)505件に分け、その実施状況と有害事象に関して比較検討を行った。SB群vs DB群の順に記載する。【結果】年齢分布は1歳未満 39%、1-3歳 27%、3歳以上 34%で、有害事象は255件(4.6%)で起こっていた。有害事象発生の有無で比較した場合、年齢(p<0.001)、動脈管依存性体循環や高右室圧、強心剤や補助循環、呼吸管理などの術前リスクの有無 (p<0.001)、緊急度 (p<0.001)などで有意差を認めた。サブグループ解析において年齢は1.4 (0.5-3.9)歳 vs 5.7 (2.2-12.7)歳、体重は8.3 (5.5-13.1) kg vs 16.6 (10.4-38.0) kgでダブルバルーンはより体格の大きい症例で行われていた。行われた手技は血管拡張79% vs 60%、弁形成15% vs 36%、ステント再拡張6% vs 4%で、主な標的病変は肺動脈52% vs 32%, 肺動脈弁 13% vs 33%であった。完了率は95% vs 98%と両群で高かった。またDB群の10%は右室流出路導管などの人工導管に、8%が大動脈に対してバルーン 拡張術が行われていた。手技時間は110 (82-148)分 vs 120 (96-148)分、有害事象は4.7% vs 3.6%で起こり、そのうち42% vs 29%で他臓器への影響を認めた。【結論】バルーン拡張術の1/3は3歳以上、特にダブルバルーンは比較的体格の大きい小児で年間150例以上用いられており、低プロファイルかつ大口径バルーンの需要があることが示唆された。