第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

カテーテル治療

デジタルオーラルI(OR12)
カテーテル治療 2

指定討論者:小林 富男(群馬県立小児医療センター)
指定討論者:藤本 一途(国立循環器病研究センター)

[OR12-3] 逆方向中隔穿刺およびWire atrial septostomyを用いてASD拡大を行った一例

長友 雄作, 永田 弾, 山村 健一郎, 松岡 良平, 江口 祥美, 豊村 大亮, 福岡 将治, 鵜池 清, 平田 悠一郎, 大賀 正一 (九州大学病院 小児科)

キーワード:wire atrial septostomy, RF wire, PA-IVS

【背景】
肥厚した中隔やFlap状の中隔では、通常のpullback、static BAS(Balloon atrial septostomy)でのASD拡大がときに困難である。RF wireを用いた逆方向中隔穿刺とそれに続くWAS(Wire atrial septostomy)法を行いASDを拡大した一例を報告する。
【症例】
症例は18か月男児、体重6kg、RVDCC(右室依存性冠循環)を伴うPA-IVSであり、1か月でBTシャント手術を行い、グレン手術待機中であった。ASDは5mmと小さくRA圧=9 mmHg、LA圧=4 mmHgと圧差を認めた。心房中隔はFlap状で、Pullback BAS、10mm+10mmのダブルバルーンによるStatic BASを行ったが効果がなかった。RVDCCのためグレン手術時には心停止処置を避けることが望ましく、先行してWASを行う方針とした。
右鼠径より6.5 Frガイディングカテーテル(GC)をIVCに位置し、4F Pigtailカテを左房側から中隔にひっかけた状態で、あらかじめ用手的に湾曲させたNykanenTM RF wireをPigtailカテ先端に通過させた。経胸壁エコーで左房→右房に中隔がTentingされることを確認し、10W 1sの通電で穿通した。そのまま右房内に2.9Fマイクロカテーテルを進め、RF wireをTransendTM 0.010 inch microwireに交換した。同じGCから挿入したスネアカテでmicrowireを把持しそのままGCから外に出すことで、microwireを用いてASDと新たな穿刺孔にループを形成した。そのままGCを中隔に近づけmicrowireをGC内に引き入れて中隔組織の切断を試みたが困難であり、GC内に進めたRF wireで引き入れた中隔組織に通電を加えて切断した。ASDは15mmに拡大し、心房間の圧差は消失した。1か月後にグレン手術を心停止処置なしで行った。
【考察】
WASは2016年に北野らが報告したASD拡大法で、逆方向穿刺に続いてWASを行い安全にかつ十分にASDを拡大することができた。PigtailカテとRF wireを用いた左房からの逆方向穿刺は、小さな左房やFlap状中隔の症例でも安全に行える穿刺法である。