[OR15-2] マスター二階段試験の心室性不整脈スクリーニングにおける有用性の検討。
Keywords:マスター, 心室性不整脈, スクリーニング
【はじめに】マスター二段階段試験(マスター負荷)は運動負荷試験としては負荷量が不充分とされるが安静時心電図では検出されない不整脈が誘発されることをしばしば経験する。同試験の不整脈スクリーニングという観点での検討は少なく、簡便で施行しやすいものの実際にどの程度有用であるかの検討は有意義と考える。【方法】2017-2020年に当院循環器外来でマスター負荷を行った471名のうち同時期にホルター心電図を施行した106名を対象としマスター負荷の所見と比較検討した。ホルター心電図で心室期外収縮(VPC)が5%以上(VPC>5%)または二連発以上(VPC>Couplet)を有意な心室性不整脈とした。【結果】106人の年齢は中央値18歳(13-26)で71人は心疾患術後。安静時15人(14%)、加えてマスター負荷後に16人(15%)にVPCを認めた。安静時VPCの存在(VPC_Rest)はFisherの正確検定でVPC>5%ならびにVPC>Coupletと有意な連関(ともにP<0.01、連関係数φは0.8と0.3)。同様にMaster負荷でのVPC検出(VPC_Master)はVPC>5%ならびにVPC>Coupletと強い連関を認めた(ともにP<0.01、連関係数φは0.7と0.5)。またVPC_RestはVPC>5%とVPC>Coupletに関しそれぞれ感度/特異度が0.72/0.97と0.28/0.92で、VPC_MasterはVPC>5%とVPC>Coupletに関しそれぞれ感度/特異度が1.0/0.85と0.63/0.85であった。【考察】VPCの頻度に関し、VPC_Rest、VPC_MasterはともにVPC>5%と強く連関し、Master負荷によりVPC>5%に対するスクリーニング感度が上昇する一方で特異度は軽度低下にとどまる。同様にVPC>Coupletに関してもMaster負荷により感度が上昇する一方で特異度の低下は軽微であった。【結論】マスター負荷は心室性不整脈をスクリーニングする上で安静時心電図検査のみの場合に比べ感度が上昇する一方で特異度は軽度の低下にとどまり簡便ながら有用と考えられる。