[OR17-1] 新生児・乳児期早期の心臓手術後難治性胸水に対する、ピシバニールによる胸膜癒着療法
Keywords:乳糜胸, 胸膜癒着療法, 難治性胸水
【背景、目的】心臓手術後の難治性胸水に対する治療方針は議論があり、胸管結紮やリンパ管造影や塞栓術など様々な選択肢がある。乳児期早期までの症例に対して、我々はOK-432(ピシバニール)を使用した胸膜癒着療法を行っており、その成績を報告する。【対象】2施設で20年8月までに胸膜癒着療法を行った連続11例。心臓手術時の年齢の中央値は9日(IQR:6-18)、体重は2.84kg(2.30-3.07)。MCT、絶食、オクトレオチドdivが無効であったものを難治性胸水と定義した。BVR対象が9例、UVR対象が2例で、姑息術が4例、根治術が7例で、未熟児は2例であった。【方法】CVカテーテルまたはアスピレーションkitを留置後に、0.5-1.0KEを生食10mlに溶解し、胸腔に注入後、10-15分毎の体位変換を行い、排液させた。【結果】癒着療法前[POD.13(8-18)]の胸水の最大排液量は260ml(160-317)、94.7ml/kg/日(60.2-107.7)であった。癒着療法はPOD.20(15-22)から開始し、注入した回数は4(3-6)回であった。10例では胸水のcontrolがつき、癒着療法開始後15(12-28)日後に再貯留なく全てのdrain抜去可能となった。合併症としては、炎症によると思われる、肺のcompliance低下+血液gas悪化:2、胸水drainge不良に伴う新規drain挿入:5、心房性不整脈:1を認めたがいずれも一時的であった。またリンパ浮腫を4例に認め、腹水のdraingeや利尿などで3例は軽快したが、severeなリンパ浮腫を呈した1例は胸水のcontrolもつかず、sepsis、DICから死亡となった。単心室の2例はFontanへ到達し、二心室の2例も根治に到達した。遠隔死亡が3例あったが、いずれも癒着療法から3年以降のもので、拘束型肺障害などはなし。【考察、結論】OK-432による胸膜癒着療法は、日数を要するが確実に胸水を減らすことが出来る有効な治療法である。炎症による合併症はいずれも一時的なものでcontrol可能であるが、リンパ浮腫がsevereな場合にはcontrol困難となりうるため注意が必要である。