The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

集中治療・周術期管理

デジタルオーラルI(OR18)
集中治療・周術期管理 2

指定討論者:猪飼 秋夫(静岡県立こども病院)
指定討論者:岩田 祐輔(岐阜県総合医療センター)

[OR18-3] 生体電気インピーダンス法(BIA法)を用いた小児心臓手術症例の周術期における体内水分量変化についての検討

大日方 春香, 安河内 聰, 小山 智史, 正本 雅斗, 米原 恒介, 沼田 隆佑, 赤澤 陽平, 武井 黄太, 瀧聞 浄宏 (長野県立こども病院 循環器小児科)

Keywords:BIA法, 細胞外水分比, 細胞内脱水

【背景】生体電気インピーダンス法(BIA法)は、非侵襲的に生体のインピーダンスを測定し、体組成評価を行うことができる方法である。BIA法では水分評価として体内総水分量(TBW),細胞内水分量(ICW), 細胞外水分量(ECW)を区別して測定できる。近年、ECW/TBW(細胞外水分比)は浮腫の目安になるとされ、透析患者の水分管理に有用とする報告があり、ICU管理となるような重症患者の予後指標としても注目されている。【目的】小児心臓手術症例の周術期における体内水分動態を評価すること。【対象と方法】2020年4月~2021年2月の期間に人工心肺を用いた心臓手術を受けた5kg以上の小児(0歳3か月-11歳2か月)45例を対象とした。BIA法による高精度体成分分析装置(InBody S10)を用いて、術前、術後、術翌日、術後2日に体組成を測定した。【結果】術後のECW/TBWは5例を除いて術前よりも上昇し、術後2日にかけて元の水準に戻る傾向にあった(術前の数値を100%として術後101.6±1.6%、術翌日101.7±1.9%、術後2日100.5±2.5%)。その変化率の程度は術中の水分出納量と正の相関を示していた。また、2心室修復群29例と単心室修復群16例に分けてECWとICWの変化を検討すると、単心室修復群では術後ECW・ICWともに増加し、ECW増加率>ICW増加率であった(ECW108.4±9.7%、ICW105.6±8.1%)。一方で2心室修復群では、ECWは増加している一方でICWは約半数の症例で減少していた(ECW 104.2±13.5%、ICW 99.1±5.9%)。【考察】BIA法で心臓手術時の体内水分分布を検討した報告はまだ少ない。これまでの人工心肺を用いた心臓手術後の水分分布に関しては浮腫に注目されている報告が多いが、今回の検討からは、特に2心室修復の症例においては細胞内水分量が減少している例があることが判明した。【結語】心臓手術術後にはECW/TBWが上昇する傾向にある。2心室修復の症例においては特に、細胞外浮腫の改善のみならず細胞内脱水に留意した管理も必要である。