The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

心筋心膜疾患

デジタルオーラルI(OR19)
心筋心膜疾患

指定討論者:小垣 滋豊(大阪急性期・総合医療センター)
指定討論者:武田 充人(北海道大学病院)

[OR19-1] 小児肥大型心筋症に対するシベンゾリンの効果

山澤 弘州, 武田 充人, 泉 岳, 永井 礼子, 佐々木 大輔, 辻岡 孝郎, 白石 真大, 佐藤 逸美 (北海道大学大学院 医学研究院 小児科)

Keywords:肥大型心筋症, シベンゾリン, 左室流出路狭窄

【背景】本邦成人では肥大型心筋症(HCM)の治療に抗コリン作用の少ないシベンゾリン(Cs)の使用が報告されている。【目的】小児HCMに対するCsの効果を観察する。【方法】対象は当科Cs治療開始時18歳以下のHCM11例。全例でβ遮断薬併用。左室について心臓カテーテル検査での、流出路圧較差(PG)、収縮性指標(dp/dt)、弛緩指標(τ)、充満指標に近似スティフネス(est K)、心エコー検査での流入波形(LVin)E/A比を、Cs1.4mg/kgの静注による急性負荷と経口薬による慢性投与の前後で比較した。急性負荷は静注直後、慢性投与は内服2時間後で血中濃度測定。Cs投与前後の上記項目は投与前-投与後、値は中央値(四分位範囲)で記載した。est Kは(拡張末期圧-最小圧)/一回拍出量係数で算出。比較にはWilcoxon signed rank testを用いた。p値は0.05以下を有意とした。【結果】対象年齢は12(7,15) 歳。急性負荷はCs血中濃度(pg/ml) 829(296,1866)、dp/dt(mmHg/sec)1339(1200,1447)-1079 (987,1124),p=0.03、PG(mmHg)18(3,64)-3(0,12),p=0.02、τ(msec)52(42,81)-46(34,67),p=0.44、est K(mmHg/ml×m2)0.19(0.13,0.25)-0.13(0.11,0.17),p=0.01、LVin E/A 1.1(0.9,1.7)-1.7(1.5,1.9),p=0.03。慢性効果はCs使用期間33(15,46)ヶ月及び投与量6.6(3.2,8.3)mg/kg。単位同上でCs血中濃度241(119,324)、dp/dt 1320(1213,1348)-1112(900,1165),p=0.03、PG 19(4,53)-15(0,40),p=0.44、τ 52(44,81)-51(45,93),p=0.63、est K 0.18(0.13,0.24)-0.12(0.09,0.14),p=0.03、LVin E/A 1.1(0.9,2.1)-1.9(1.2,2.5),p=0.05だった。【考案】HCMの病態の中に左室流出路狭窄と拡張障害がある。CsはPG軽減に有効だが時間経過で効果減弱した。急性>慢性期濃度が影響した可能性がある。興味深いのは拡張障害改善の可能性を示した点である。但し弛緩障害に関しては収縮抑制によるrecoilする力の減弱が弛緩の改善を相殺しているのではと推察された。