[OR19-5] ECMOを要した小児劇症型心筋炎の治療成績と病理所見の特徴
Keywords:劇症型心筋炎, ECMO, 心筋生検
【背景】ECMOを要した劇症型心筋炎の生存退院率は、欧米からの文献報告によれば約70%程度であるとされる。【目的】自施設における劇症型心筋炎の治療成績をまとめる。【方法】2008年12月から2021年2月にECMOを要した劇症型心筋炎症例の年齢、性別、治療内容、検査所見と最終予後を診療録から抽出した。【結果】ECMOを要した症例は17例(女11、男6)、発症時年齢は中央値7歳0か月(1歳7か月~13歳8か月)(以下、中央値(最小値~最大値))、ECMO期間は6日間(3~21日)であった。17例中、左室unloadingを行った症例は5例(29%)で、その内3例は大動脈弁の開放が失われたことを契機に導入した。転帰は死亡が2例(12%)で、生存退院15例(88%)のうち、中枢神経合併症4例(27%)、軽度心機能障害残存とペースメーカー留置が各1例(7%)、完全右脚ブロックCRBBB残存が2例(15%)であった。死亡理由は脳出血(心機能は回復)、心臓を含む多臓器不全が各1例であった。生存15例中、1例のみで軽度心機能異常を認めた以外は、全例で心機能は正常化した。左室駆出率60%を確認するまでに要した期間は11日(23.7日、5~108日)であった。11例(65%)で治療開始から16日(12~31日)に心筋生検による病理検査を行っており、心機能が回復せず死亡に至った1例では心筋の約60%が壊死していたが、他10例では細胞障害所見を伴わないリンパ球浸潤と軽度の線維化を認めるにとどまった。【考察】小児劇症型心筋炎の治療予後に関する文献報告に比して、当院の生存退院率は十分に比肩し得るものと評価した。自検例においては、急性期治療でECMOを要しても、心機能回復例の病理所見は軽微であった。