[OR19-6] 正常型トロポニンT過剰発現はトロポニンT変異型拡張型心筋症マウスの予後を改善する
Keywords:拡張型心筋症, トロポニンT, 遺伝子治療
【背景】拡張型心筋症 (DCM) は心室の収縮不全と拡大を特徴とする予後不良疾患であり、根本的な治療法はまだない。先行研究では、心筋トロポニンT (TNNT2) のアミノ酸変異 (ΔK210) を持つマウス(TNNT2ΔK210/ΔK210) がヒト若年性DCMと同様の表現型を示すことが報告され、変異型TNNT2を筋原線維に過剰発現すると内因性TNNT2との置換によってDCM病態を示すことから、内因性TNNT2はTNNT2遺伝子導入で置換し得ることが示唆された。【目的】正常型TNNT2を過剰発現させたマウス(hTNNT2 Tg: Tg)をTNNT2ΔK210/ΔK210 と交配させたマウス(Tg/TNNT2ΔK210/ΔK210) を作出し、DCMに対する改善効果を検証する。【方法・結果】Tgマウスではヒト正常型TNNT2が発現していることをタンパクレベルで確認し、野生型マウスと比較して心重量に有意差はなく、心筋障害も認めなかった。Tg/TNNT2ΔK210/ΔK210(中央値118日:n=57)マウスは約17週に半数が死亡したが、その寿命はTNNT2ΔK210/ΔK210(中央値62日:n=87)マウスと比較して有意に延長していた。一方で、心重量に関しては両群のマウスでは有意差を認めなかった。心エコー検査で左室駆出率を調べたところ、TNNT2ΔK210/ΔK210マウス(32.72%:n=8)と比較してTg/TNNT2ΔK210/ΔK210マウス(34.01%:n=20)はわずかに改善傾向を示した。【考察】TNNT2ΔK210/ΔK210マウスにおけるヒト正常型TNNT2過剰発現は、表現型を部分的に改善するもののその治療効果は十分でなかった。その理由には、Tg/TNNT2ΔK210/ΔK210マウスにおけるヒト正常型TNNT2の置換効率が十分でないことが示唆された。