[OR2-6] 遊走脾茎捻転を起こした完全内臓逆位・フォンタン術後の一例
Keywords:遊走脾捻転, 内臓逆位, フォンタン術後
【背景】遊走脾は脾固定靭帯の先天欠損、形成不全・過長により、過度の可動性が生じて発症する稀な疾患である。無症状で経過することも多いが茎捻転を起こした際には緊急手術の対象となる。今回、フォンタン術後内臓逆位症例で、遊走脾に対して脾摘術検討中に遊走脾茎捻転を起こした症例を経験した。フォンタン術後の遊走脾茎捻転の症例は極めて稀であり若干の文献的考察を加え報告する。【症例】症例は6歳女児。内臓逆位、右室型単心室、両房室弁右室挿入、肺動脈閉鎖で、1歳2か月で両方向性グレン手術、3歳3か月でフォンタン手術を施行。グレン手術後に胃軸捻転を認め、1歳3か月で胃固定術を施行。固定術後も胃拡張から頻回に嘔吐を認め、腹部診察頻度は多かったが遊走脾の診断には至っていなかった。フォンタン術後定期フォロー時に下腹部腫瘤を認め、腹部超音波検査で初めて遊走脾の診断に至った。消化器症状を度々認めていたが自然軽快し、小児外科医相談の上、腹部超音波検査上脾捻転の所見なくサイズからも固定術は困難と判断。また液性免疫の面から待機的摘出術の方針としていた。6歳時に腹満、腹痛、嘔吐を主訴に緊急入院。同日造影CTで遊走脾茎捻転と診断。緊急脾臓摘出術を施行した。脾臓は8.5×7.5×6cm大で、約450gと腫大していた。病理所見上は急性うっ血だけでなく、慢性的なうっ血を示唆する所見も認め、フォンタン術後の門脈圧上昇から脾腫が進行し、捻転しやすい状態にあったと考えられた。術後、23価肺炎球菌ワクチン接種と抗菌薬予防内服開始後に退院としている。術後6か月経過しているが、重症感染症の発症なく嘔吐も軽減し経過している。【結語】フォンタン術後の門脈圧上昇より脾腫をきたし遊走脾が顕在化した症例を経験した。遊走脾茎捻転は緊急手術を要する疾患であり、その管理には介入時期を踏まえ小児循環器医だけでなく、小児外科医などと緊密に連携したフォローアップ体制が重要である。