[OR20-1] 小児補助人工心臓治療の長期化による影響
キーワード:小児心移植, 体外式VAD, 植え込み式VAD
【背景】末期的心不全の小児に対する、心移植への橋渡し(BTT)としての補助人工心臓(VAD)治療の長期化は、累積する合併症への対処を要する一方、予想外の自己心室機能回復を得て離脱(BTR)する症例の選別を可能にする。【目的】当施設の治療成績を後方視的に再検討。【対象と方法】2010年4月から2021年3月までにVAD装着下で心移植登録を行った15歳未満の30例。月齢中央値 64.5ヶ月[範囲:1.8-177]、体表面積(BSA)0.66 m2 [0.19-1.57]。現疾患は拡張型心筋症(DCM) 23例、その他7例。使用デバイスはBerlin Heart EXCORが20例で、うち2例は両心補助(BiVAD)。以下Nipro 5例、Heartmate 3が 3例、およびJarvik 2000とHVADがそれぞれ1例。患者診療録より生存率、転帰、および合併症(脳血管障害、感染および機器異常)発生状況を検討。追跡完遂率100%、生存例の平均観察期間0.8年[0.2-5.0]。【結果】平均補助期間は9.7ヶ月[1.5-31.6]。生存率は5年で62 %。心移植到達11例中の死亡2、離脱5例(装着後2.4, 2.7, 4.0, 8.3, 及び23.0ヵ月)中の再装着・死亡0、および心移植待機中14例中の死亡4。重篤な脳血管障害回避生存率は3年で48 %。梗塞による死亡1例(装着後6ヵ月)、梗塞後神経学的後遺症残存2例、脳外科的治療介入を要する出血5例(神経学的予後良好)。VAD感染回避生存率は3年で20%。敗血症による死亡3例(装着後3,3,および14ヵ月)。体外式VADのdriveline感染8例中4例で外科的治療介入。機器異常回避生存率は3年で50 %。その内、EXCOR pumpの三層膜損傷が1例及び脱血管カニューラ抜浅による脱血不良で再装着が1例。BSA 1.2 m2を超える患児へのHeartmate 3装着は少数例、短期間であり今後の経過観察が必要。【まとめ】送脱血管貫通部の皮膚衛生状態は経時的に悪化し、感染は抗凝固治療を不安定にする。より安定した抗凝固薬の臨床応用と共に、新規植え込み型device等のclinical trialに期待したい。