[OR20-2] TCPC術後の重症心不全に対し植込み型補助人工心臓を装着し、心臓移植待機している児の管理経験
キーワード:心臓移植, 補助人工心臓, TCPC
【症例1】18歳女性。右心型単心室、右胸心、無脾症に対し9ヶ月時に両方向性 Glenn手術、4歳時にTCPCを施行した。TCPC術後から徐々に心機能が低下し、8歳頃より心不全入院を繰り返した。房室弁逆流合併もあってやがて内科的管理困難となり、13歳時に心臓移植登録後、Jarvik2000を装着した。術後2か月にCVP 12mmHg程度で自宅退院したが、その後も溶血や心不全のため年数回の入院を要することとなった。溶血に対し回転数を下げるとCVPが過度に上昇し、心不全増悪に対し回転数を上げると溶血が進行するなど、管理に苦慮した。また17歳時には大動脈弁逆流が重度に増悪し、大動脈弁形成術(Park’s stitch)を施行した。【症例2】12歳女性。右室型単心室、無脾症に対し、7ヶ月時に両方向性Glenn手術、2歳11ヶ月時にTCPCを施行した。当初からRVEF 35%程度と心機能低下があり、慢性心不全管理を行っていた。11歳時に急性増悪してフォンタン循環が破綻し、遠心ポンプを用いた体外式心室補助を行いながら心臓移植申請した。経過中に中大脳動脈領域の脳梗塞を合併するも回復し、心臓移植適応取得後にHVADを装着した。術後は胸水のコントロールに難渋し、体肺側副血行路の発達が原因と考え、経皮的血管塞栓術を実施した。術後3か月にCVP 10mmHg程度で自宅退院した。中等度の大動脈弁逆流と房室弁逆流を認めており、慎重に経過観察している。【まとめ】先天性心疾患術後患者に対する補助人工心臓や心臓移植の適応は確実に広がっており、体心室機能低下が主体のFailing Fontan症例は、それが唯一の治療選択肢となる場合がある。しかしフォンタン術後患者の補助人工心臓管理は容易でなく、その特殊な循環ゆえに適切なCVPや心拍出量の設定、易血栓性や弁逆流への配慮など、特に細やかな管理が必要である。