[OR21-2] 層別ストレイン・ストレインレートによる小児期発症炎症性腸疾患患者の左室機能評価
Keywords:炎症性腸疾患, 層別ストレイン, 心機能
【背景】炎症性腸疾患(IBD)患者は健常者と比較して心機能低下がみられるリスクが高いとされ、特に小児期発症IBDでは罹患期間が長いためその傾向が高いと考えられる。近年IBDにおけるストレインの低下が報告され始めたが、層別ストレインを用いた報告は未だ存在しない。【目的】小児期発症IBD患者の左室機能を、より鋭敏な解析法である層別ストレイン法により検討すること。【方法】対象は潰瘍性大腸炎42例、Crohn病20例の計62例 IBD群(発症時年齢中央値12.1歳:0.4-15.4歳、検査時年齢17.7歳:8.2-24.7歳)、正常群62例(中央値17.4歳: 8.3-25.9歳)。心臓超音波による一般計測に加え、胸骨傍短軸像より心基部、乳頭筋部、心尖部の円周方向ストレイン(BCS、PCS、ACS)、および心尖部四腔像より長軸方向ストレイン(GLS)の内層・中層・外層の層別ストレインと拡張早期ストレインレート(SR)について比較検討した。【結果】IBD群は正常群と比較してLSが内層(-19.0±0.3%vs-21.5±0.3% p<0.001)、中層(-16.7±0.3%vs-19.2±0.3% p<0.001)、外層(-14.8±0.2%vs-17.2±0.3% p<0.001)の全層で低下していた。また、CSはBCS(-23.9±0.4%vs-25.0±0.4% p=0.040)及びPCS(-24.0±0.5%vs-25.1±0.3% p=0.043)の内層がIBD群で低下していた。SRはBCSRの全層とPCSRの内層及び中層でIBD群が有意に低下していた。【考察】小児期発症IBD患者では正常群と比較して内層の心筋変形能が低下している。IBDにおける心機能低下の機序は微小血流障害や栄養障害など多くの因子が関連するといわれており、機序解明と今後の管理方針についてさらなる検討が必要である。