The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

自律神経・神経退役因子・心肺機能

デジタルオーラルI(OR22)
自律神経・神経退役因子・心肺機能

指定討論者:畑 忠善(藤田医科大学大学院 保健学研究科)
指定討論者:新居 正基(静岡県立こども病院)

[OR22-1] 体位性頻脈症候群小児患者へのイバブラジン投与

小川 禎治, 松岡 道生, 三木 康暢, 亀井 直哉, 富永 健太, 城戸 佐知子, 田中 敏克 (兵庫県立こども病院 循環器科)

Keywords:イバブラジン, 体位性頻脈症候群, ヘッドアップティルト試験

【背景】体位性頻脈症候群(POTS)は慢性型の起立性調節障害の代表的な疾患である。自律神経調節障害などのために座位や立位にて心拍数が過剰に上昇する。主な症状として動悸、めまい、呼吸困難感、倦怠感、頭痛、腹痛、運動耐容能低下、認知機能低下などが挙げられる。水分・塩分摂取量増量などの非薬物療法では効果が不十分な場合は薬物療法が行われる。これまでは主にベータブロッカーが投与されてきたが、心機能低下や気管支喘息をきたすリスクがある。イバブラジンは心臓の洞結節のHCN4チャネルを阻害して過分極活性化陽イオン電流を抑制し心拍数を下げる。本来の適応は心不全であるが、POTSの治療薬として欧米では注目されてきた。日本においては2019年11月に発売され、当院では、低血圧や気管支喘息を合併したPOTS患者について、倫理委員会の承認のもと、イバブラジンを投与してきた。なお、小児のPOTS患者へのイバブラジン投与についてはこれまでまとまった報告は見当たらない。【方法】イバブラジン投与を行った12歳以上のPOTS患者の記録を後方視的に検討した。【結果】症例数は12例、性別は男児7例・女児5例、年齢は中央値13歳(範囲:12~16歳)であった。心拍数は、イバブラジン投与前は臥床時が中央値75bpm(四分位範囲70~85bpm)、ヘッドアップティルト試験(HUTT)中が135bpm(132~148bpm)であったが、イバブラジン投与開始後は臥床時が63bpm(52~67bpm)、HUTT中が99bpm(91~105bpm)となり有意に低下していた。症状の軽減は8例で顕著であった。副作用は見られなかった。【考察・結論】小児のPOTS治療において、イバブラジンは有効かつ安全である。但し、POTSは心拍数以外の諸要素が複雑に絡む疾患であり、総合的な診療が重要である。