[OR23-4] 小児の血栓弁に対する血栓溶解療法の治療成績
キーワード:血栓弁, 血栓溶解療法, tPA
【背景】人工弁置換術後の血栓弁に対して、血行動態が安定している症例では血栓溶解療法(TT)を選択する報告も散見されるが、治療方針は確立されておらず治療成績についても不明である。【目的・方法】2007年1月から2020年12月までに当院でTTを施行した血栓弁の4症例について診療録を用いて後方視的に治療内容や成績について検討した。【結果】4症例ともTTにより弁の可動性は改善し、予後に関わる合併症は認めなかった。1.1歳の女児、Norwood術後のneoARに対してAVR(SJM 17mm)を施行し、術後1ヶ月で血栓弁を発症した。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA) 0.045mg/kg/hとヘパリン9.3U/kg/hを開始し、tPAを0.063mg/kg/hまで増量して6日間でtPAは終了した。合併症としてわずかに皮下血腫を認めた。2.9ヶ月の男児、IEによるMRでMVR(SJM17mm)を施行し、術後3ヶ月で血栓弁を発症した。ウロキナーゼ(UK)1500U/kg/hとヘパリン10U/kg/hを開始し、UKを5750U/kg/h、ヘパリンを30U/kg/hまで増量して11日間でUKを終了した。3.10ヶ月の女児、asplenia、単心室でCAVVR(SJM 17mm)を施行し、術後2ヶ月で血栓弁を発症した。tPA 0.03mg/kg/hとヘパリン20U/kg/hを開始し、tPAを0.1mg/kg/hまで増量して5日間でtPAを終了した。4.1歳の男児、総動脈幹遺残でAVR(SJM 17mm)を施行し、術後3ヶ月で血栓弁を発症した。tPA0.03mg/kg/hとヘパリン20U/kg/hを開始し、4日間でtPAを終了した。【考察】血栓溶解療法の適応条件として、発症から比較的短時間であり、かつ血行動態が安定していることが挙げられる。また治療期間として5日間程度は必要と考えた。【結論】血行動態が比較的安定した小児の血栓弁に対して血栓溶解療法は安全かつ有効な治療法である。