The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルI(OR23)
術後遠隔期・合併症・発達 1

指定討論者:田中 敏克(兵庫県立こども病院)
指定討論者:野村 耕司(埼玉県立小児医療センター)

[OR23-6] 一過性骨髄異常増殖症合併症例が心臓手術後の感染リスクとなりうるかについての検討

正木 祥太, 村山 弘臣, 岡田 典隆, 大沢 拓哉 (あいち小児保健医療総合センター)

Keywords:TAM, 縦隔炎, 術後感染

【背景】一過性骨髄異常増殖症(TAM : transient abnormal myelopoiesis)は、Down症候群の約10%に認められ先天性心疾患の合併が多いとされる。多くは無治療経過観察のみで芽球が消失し比較的予後良好だが、中には後に再増悪し白血病に至る症例や臓器障害のために早期死亡する症例も報告されている。一方でTAM合併の先天性心疾患術後の感染リスクについてはほとんど報告がない。当院ではTAM合併心疾患は腫瘍性病変であることも考慮し、TAMの寛解を可及的に得た段階で、先ずは姑息術で時間を稼ぎ、二期的に心内修復術を行っておりその経験を検討した。
【対象と方法】2018年1月から2021年2月に当院で心臓手術を施行したTAM既往Down症例は8例(ASDが1例、VSDが6例、c-AVSDが1例)で、ASD閉鎖術1例以外は肺動脈絞扼術を経た二期的心内修復術を選択した。
【結果】初回肺動脈絞扼術7例は中央値2か月(0-12か月)、体重中央値4.131kg(2.796-6.775kg)に、ASD閉鎖術1例は1歳4か月時に施行された。姑息術後に縦隔炎3例と、皮膚表層感染1例を認めた。縦隔炎のうち2例は手術時すでに末梢血液中の芽球は消失しており、その他の症例においても芽球は1%以下とTAMの病勢としては落ち着いていた。同時期に施行したTAM既往の無いDown症のVSD、c-AVSDに対する肺動脈絞扼術症例は21例で、創部感染の発生は無く、TAM既往例と比較し有意に低かった(P < 0.01)。 ASD閉鎖術の1例は1歳4か月時に施行され術後感染症の発生を認めなかった。姑息術7症例中5症例は平均10±6か月に心内修復術を施行し創部感染の発生はなかったが、1症例で乳び胸から続発した膿胸および尿路感染を発症した。
【結論】乳児期早期にTAMを発症した症例は,芽球消失後に人工心肺を避けた手術を行っても高い創部感染発症率を示した。芽球消失から10か月程度経過した場合の創部感染の発生率は低かった。