The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

術後遠隔期・合併症・発達

デジタルオーラルI(OR24)
術後遠隔期・合併症・発達 2

指定討論者:塩野 淳子(茨城県立こども病院)
指定討論者:落合 由恵(JCHO九州病院)

[OR24-2] Fontan術後の難治性蛋白漏出性胃腸症への新たな治療戦略:シロスタゾールによる心房調律への介入

渡邉 瑠美1, 本田 崇1, 高梨 学1, 北川 篤史1, 木村 純人1, 平田 陽一郎1, 宮地 鑑2, 石倉 健司1 (1.北里大学医学部 小児科学, 2.北里大学医学部 心臓血管外科学)

Keywords:PLE, シロスタゾール, 心房調律

【背景】Fontan術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)の治療においては、血行動態を改善させることが肝要である。シロスタゾール内服による心房調律への介入により、難治性PLEが軽快した2症例を経験したので報告する。
【症例1】両大血管右室起始症、完全大血管転位症、肺動脈狭窄、左室低形成の女児で、1歳4か月時にFontan手術を施行した。2歳でPLEを発症し、抗心不全薬等の内科治療では難治であり11歳でステロイドを開始した。13歳で敗血症を契機にステロイドを中止し、以後は継続的なアルブミン点滴が必要となった。心臓カテーテル検査で、洞調律と房室接合部調律で計測ができ、各々の条件下での心拍数は101、56/分、心拍出量は4.07、2.14L/分、静脈圧は12、14mmHgであった。シロスタゾール導入後は終日、洞調律を維持でき、平均脈拍数も78/分から114/分へ上昇し、アルブミン投与は不要となり通学が可能となった。
【症例2】左心低形成症候群の女児で、1歳7か月でFontan手術を施行した。5歳時にPLEを発症し、11歳でステロイドを導入した。13歳で敗血症を契機にステロイドを漸減するも、以後はアルブミン投与のための長期入院を要した。移動性心房調律で、心臓カテーテル検査で心拍数が131/分と93/分の条件下で、心拍出量は各々3.32、2.33L/分であった。シロスタゾール開始後には平均脈拍数は77/分から102/分へ上昇し、アルブミン投与は不要となり外来治療へ移行した。
【考察】シロスタゾールは心房調律を適正化し、心拍出量の増加や中心静脈圧の低下による血行動態の改善を誘導し、PLEの改善に寄与したと考えられる。
【結語】シロスタゾールによる心房調律への介入は、徐脈性不整脈を伴うFontan術後の難治性PLEには考慮すべき治療戦略であると考えられた。心不全増悪などの薬剤の副作用もないが、長期予後への効果については今後の検討を要する。