The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

成人先天性心疾患

デジタルオーラルI(OR27)
成人先天性心疾患 2

指定討論者:上村 秀樹(奈良県立医科大学)
指定討論者:先崎 秀明(国際医療福祉大学)

[OR27-1] 成人期Failed Fontanの検討から得られたFontan術後遠隔期の考察

江見 美杉1, 上山 敦子1, 吉原 千華1, 廣瀬 将樹1, 石井 良1, 石田 秀和1, 成田 淳1, 大薗 恵一1, 塚本 泰正2, 坂田 泰史2 (1.大阪大学 医学部附属病院 小児科, 2.大阪大学 医学部附属病院 循環器科)

Keywords:failed Fontan, 成人先天性心疾患, Fontan術

【はじめに】単心室循環において小児期はgood Fontanで経過していたのにも関わらず成人期にfailed Fontanに陥ることを経験する。しかしFontan循環不全に至る経過を解析した報告は少ない。【目的】成人期Fontanの経過を解析し、failed Fontanの危険因子について検討・考察する。【方法】Fontan術後成人例42例(32±7.7歳)のうちfailed Fontan(F群)8例(34±9.0歳)、non-failed(G群) 34例(31±7.3歳)の検査所見をFontan術後の推移(初回Fontan術後10年、15年、20年、25年)も含め、統計学的有意差を用いて比較検討した。【結果】F群にはFontan術後24±6.3年で陥り、その内訳としてPLE→死亡1例、不可逆性心不全5例(死亡2例)、肝がん2例であった。この直近での検査所見ではF群がG群に比較し有意に高CVP、高EDP、BNP高値、低SpO2を認めた。一方Fontan術後42例では術後10年から25年後のこれらの値の変化は乏しく、2群間で比較してもCVP、EDP、BNPでは差を認めなかったが、SpO2のみ術後10年目からF群で有意に低値となった(術後10年目:93% vs 88%)。各症例の経過を追うと4例は機械弁狭窄、卵巣出血、TCPC変換術が契機となりfailed Fontanに陥った。2群間の比較では、初回Fontan術にて心外導管以外の使用、機械弁の使用で有意差を認めた。【考察・結論】本検討では血液検査や5年毎のカテーテル検査では所見が変化することは少なく、低SpO2で推移していた症例が何らかの契機によりfailed Fontanに陥った症例がF群の半数を占めた。これらの症例ではFontan圧が上昇する前にVVシャントが形成され、圧が上昇に転じたときにfailed Fontanに至ることが推測された。成人期でfailed Fontanとなる症例の予後予測を定期検査で行うことは困難であったが、チアノーゼ症例には注意を要することがわかった。今回の検討では初回Fontan術から心外導管を使用した症例の術後年数はまだ短く、今後も症例および術後経過年数の蓄積を継続する。