[OR27-2] 先天性心疾患成人に併発した癌:当施設での実態
Keywords:ACHD, 癌, 遺伝子背景
【背景と目的】先天性心疾患(CHD)成人患者の死亡原因として癌が一定の頻度を占める(Diller, 2015)。一般に癌は加齢とともに増えるが、CHDに併発する癌は加齢による偶発と考えてよいか?近年、CHD患者の癌発生頻度は一般の2倍前後と報告されており(Mandalenakis,2019)、更に、癌リスク遺伝子異常との関連が示された(Morton, 2020)。そこで、日本人にも同様の傾向があるか否かを調べた。【対象】当施設および演者Nの患者リストから20~59歳のCHD成人1402名(中央値27歳)を抽出した。60歳以上は、年齢的に癌リスクが高いこと、CHD症例が少ないことから除外した。カルテ上で癌の種類、診断時年齢を確認し、発生頻度を一般頻度(国立がん研究センターがん情報センター「がん登録情報」2016-2017年)と比較した。【結果】癌併発例は、23歳:肝臓癌(右室狭小2心室修復後)、31歳:甲状腺癌(22q11.2欠失症候群)、32歳:子宮体癌(修正大血管転位)、33歳:精巣癌(ファロー四徴)、42歳:乳癌(心室中隔欠損)、42歳:肝臓癌(フォンタン術後)、51歳:直腸癌(ファロー四徴)の7例であった。癌で紹介されCHDの見つかった例は除外した。CHD癌併発頻度は、フォンタン術後が癌発生要因とされているためその症例を除外すると、6例/1402例で0.428%となり、一般の0.235%の約1.8倍となった。年齢別では20歳台3.5倍、30歳台7倍、40歳台3倍、50歳台5.5倍と算出された。年齢別と全体での数値の差は、高年齢患者数が少ないためと考えられる。【考察】方法論に問題があるが、使用した患者リストは恣意的なものではなく、フォロー中に癌に罹患した例のみを取り上げたので大まかな傾向は示していると考える。癌併発要因として、放射線暴露、遺伝子背景と放射線・血行動態・種々環境要因との相互作用が考えられる(Danieli,2019、Cohen,2019、Morton,2020)。【結論】CHD患者では癌併発の可能性を念頭にフォローする必要がある。