[OR29-1] DOHaD仮説(成人病胎児期発症起源説)は閉塞性肺血管病変に当てはまる: 肺動脈平滑筋のフェノタイプ変化とDNAメチレーションの関与
Keywords:肺高血圧モデルラット, 周産期低酸素, エピゲノム
【背景】周産期侵襲によるDOHaD仮説(成人病胎児起源説)が知られ、細胞のフェノタイプ、エピゲノム変化と関連すると報告される。しかし、閉塞性血管病変(PVD)の発症に繋がるか、その細胞生物学的変化、エピゲノム変化は不明である。【目的】周産期低酸素(PeriHx)刺激がSUGEN低酸素(SuHx)処置肺動脈性肺高血圧(PAH)ラットのPVDを悪化し、肺動脈平滑筋(PASMC)のフェノタイプとエピゲノム変化を誘導するかを検証した。【方法】出生前後10日の低酸素暴露により作成したPeriHxラット、7週齢でSUGEN5416投与と3週間低酸素暴露により15週齢のSuHx PAHラットを作成した。PeriHx刺激と7週齢SuHx処置の有無の4群を作成し(N=40)、15週齢で血行動態と肺血管形態を解析した。7週齢のPeriHxラットで上記の循環動態、血管病変(N=8)、肺動脈平滑筋細胞(PASMC)の増殖能、炎症誘発性(N=12)、網羅的DNAメチル化解析を行った。【結果】PeriHx は、15週齢のSuHxラットの体重増加率、生存率(60%vs100%)、RVSP、RVSP/AoSP、RV/LV+IVS(<.001)と閉塞性血管病変率、叢状病変率、中膜肥厚(<.005)を悪化させた。PeriHxは、7週齢健常ラットで体重、血行動態、組織の指標に影響なく、PASMCの増殖能と炎症誘発性を亢進(<.005)させた。PeriHxは、PASMC増殖に関連した遺伝子であるA因子をコードする領域をはじめ複数個所のDNAメチル化状態を変化させ、その遺伝子発現を (<.005)減少させた。【結論】DOHaD仮説は、PAHに当てはまり、PASMCのフェノタイプとエピゲノム変化と関連した。遺伝子異常とエピゲノム変化の影響の検討に、SuHx処理BMPR2KOラットへのPeriHxの影響も報告する。